
クロスボウによる穿通性頸部損傷の救命例(A successful case of penetrating neck injury caused by a crossbow)
Author(s) -
Mitsunori Ikeda 池田 光憲,
Junpei Takamatsu 高松 純平,
Satoshi Okubo 大久保 聡,
Tomoko Iguchi 井口 知子,
Fumihiko Nomura 野村 文彦,
Isao Ukai 鵜飼 勲,
Masanobu Kohno 鴻野 公伸
Publication year - 2021
Publication title -
nihon kyukyu igakukai zasshi: journal of japanese association for acute medicine
Language(s) - Uncategorized
Resource type - Journals
ISSN - 1883-3772
DOI - 10.1002/jja2.12598
Subject(s) - medicine , neck injury , computed tomography , computed tomography angiography , angiography , radiology , emergency medicine , poison control
要旨 穿通性頸部損傷は受傷機転の多くはナイフによる刺創や銃創である。今回我々は極めて特殊なクロスボウによる貫通性頸部損傷の救命例を経験した。症例は40歳代の女性。何者かにクロスボウで頸部を撃たれて受傷し矢が耳介直下を右側から左側にほぼ水平に貫くように頸部を貫通した。初期評価で気道や呼吸循環動態の破綻を認めず拡大する血腫などのハードサインも認められなかった。治療方針決定のためにcomputed tomography angiographyCTAを撮像したところ外頸動脈分枝に損傷による解離性動脈瘤が確認された。血管造影および透視下に矢を抜去する方針とし全身麻酔下にまず外頸動脈損傷部に対してコイル塞栓術を行った。続いて両側の総頸動脈近位側にバルンカテーテルを誘導して出血に備えてスタンバイし透視下に適宜造影を行いながら矢を抜去した。抜去後は創部からほとんど出血は認めず単純縫合閉鎖を行った。環椎前弓の骨折や顔面神経損傷に対する追加治療を要したが創感染やその他の特筆すべき合併症を認めず第21病日に退院となった。穿通性頸部損傷においては受傷機転や成傷器の特性をよく理解しハードサインの有無により緊急度を判断すると同時にCTAなどの画像診断を組み合わせて慎重に治療戦略を構築することが重要である。