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鈍的甲状腺外傷の保存的加療中に甲状腺クリーゼを呈した1例(A case of thyroid storm after blunt thyroid injury)
Author(s) -
Tomoya Hatano 波多野 智哉,
Masahiro Wakasugi 若杉 雅浩,
Kotaro Matsui 松井 恒太郎,
Hiroshi Okudera 奥寺 敬
Publication year - 2019
Publication title -
nihon kyukyu igakukai zasshi: journal of japanese association for acute medicine
Language(s) - Uncategorized
Resource type - Journals
ISSN - 1883-3772
DOI - 10.1002/jja2.12369
Subject(s) - medicine , thyroid storm , blunt , thyroid , surgery
要旨 鈍的甲状腺損傷は比較的稀な病態でありその治療戦略は確立されていない。今回我々は鈍的甲状腺損傷に対して保存的治療を選択したところ経過中に甲状腺クリーゼを発症した症例を経験したので報告する。症例は24歳の男性。甲状腺疾患を指摘されたことはなく特記すべき既往歴なし。自動二輪車ハンドル外傷による頸部血腫のため救急搬送された。CTで甲状腺左葉損傷と血腫による軽度気管偏位を認めた。気道狭窄症状はなかったが反回神経麻痺による嗄声を認め気管挿管による気道確保を行った。来院後血腫の増大は認めなかったため手術介入は行わず保存的に経過観察の方針とした。第3病日に抜管したところ気道には問題なかったが頻脈高体温を呈すとともに不穏興奮状態に陥った。血液検査でfree triiodothyronineFT 3 free thyroxineFT 4 上昇およびthyroid stimulating hormoneTSH低下があり甲状腺クリーゼと判断した。ステロイドβ遮断薬を投与し体温管理等の集中治療管理を行い経過は良好であり第12病日に自宅退院した。頸部外傷では気道狭窄が問題となる血腫血管損傷の程度により治療方針が決定されることが多いが甲状腺外傷ではホルモン逸脱による甲状腺クリーゼ発症も念頭に置いて治療方針を決定する必要がある。