
長期放置された農薬瓶に発生した硫化水素の1例(A case of hydrogen sulfide generated in agricultural chemical bottles left unused for a long time)
Author(s) -
Yasushi Fukuta 福田 靖,
Yuki Yoshioka 吉岡 勇気,
Michihisa Kato 加藤 道久
Publication year - 2016
Publication title -
nihon kyukyu igakukai zasshi: journal of japanese association for acute medicine
Language(s) - Uncategorized
Resource type - Journals
ISSN - 1883-3772
DOI - 10.1002/jja2.12109
Subject(s) - medicine , hydrogen sulfide , odor , sulfide , anesthesia , sulfur , toxicology , organic chemistry , chemistry , biology
要旨 症例は80歳男性。自宅台所で内容不明の褐色の小瓶5本を見つけ廃棄のため開栓したところ刺激臭のあるガスが噴出し失神した。家族が駆けつけると痙攣しており救急要請した。10分後救急隊現着時傷病者の意識は回復しており自力歩行可能であった。傷病者からは硫黄臭がした。室内に硫黄臭はなかったが硫化水素中毒を疑い傷病者を搬送。病院着後脱衣除染を行い救急外来に搬入した。傷病者は意識清明であり事故当初のことも覚えていた。硫化水素中毒に準じ肺水腫等の発生を考え経過観察入院とした。第2病日の胸部レントゲン写真血液検査等でも問題なく第3病日に軽快退院となった。小瓶の分析を科学捜査研究所が行った。5瓶ともに内容は古い農薬であり瓶のラベルは変色していたが内容物のサプロール殺菌剤スリトーン成長抑制剤等が判読できた。発生したガスを分析したところ硫化水素とイミダゾリジンチオンが検出された。カーバメート系殺虫剤が長期放置され経年変化によりイミダゾリジンチオンに分解酸化され硫黄基を含むこれがさらに分解され硫化水素が発生したと考えられた。長期に農薬を放置すると保管の状況によっては硫化水素等の中毒物質が発生することもあり市民には長期保管しないことを喚起することが必要である。また救急の現場においては中毒物質による意識障害にも注意して傷病者への接触を図ることが2次災害防止の観点からも重要である。