
高齢敗血症患者における炎症と免疫抑制の病態生理(Pathophysiology of inflammation and immunosuppression in the elderly after sepsis)
Author(s) -
Shigeaki Inoue 井上 茂亮,
Nobuo Watanabe 渡邊 伸央,
Nanami Mizushima 水嶋 七実,
Sadaki Inokuchi 猪口 貞樹
Publication year - 2015
Publication title -
nihon kyukyu igakukai zasshi: journal of japanese association for acute medicine
Language(s) - Uncategorized
Resource type - Journals
ISSN - 1883-3772
DOI - 10.1002/jja2.12031
Subject(s) - medicine , immunosuppression , pathophysiology , sepsis , inflammation , intensive care medicine , immunology
要旨 本邦では急激な高齢化の進行に伴い高齢者の敗血症患者が激増している。一般に高齢者の敗血症は予後不良と言われているもののその病態生理・機序は十分解明されていない。加齢に伴う免疫機能変化は「免疫老化immunosenescence」と呼ばれ主に抗原特異的な応答を担う獲得免疫機能の低下を引き起こす。一方高齢者では自己免疫性疾患の罹患率が上昇し慢性炎症素因も指摘されている。高齢者では過剰炎症と免疫抑制が密接に関わっていることが指摘されているものの敗血症患者におけるその病態生理は十分解明されていない。筆者らの検討では65歳未満の成人敗血症患者と比較して65歳以上の高齢敗血症患者のT細胞は疲弊しており活性抑制受容体の増加IL–2の産生障害活性化や増殖障害が明らかになった。また成人と比較して高齢敗血症患者では血清IL–6値が第16病日まで有意に高値を示したp<0.01。さらに高齢敗血症患者ではICU入室後24週間後の細菌培養陽性率が有意に増加し Acinetobactor 属や S. Maltophilia の喀痰培養における陽性率が増加していた。また成人と比較して高齢敗血症患者の90日後生存率は有意に低下していた。以上より高齢者における敗血症後90日後死亡率は約4倍でありその原因の一つとして敗血症直後からの過剰な炎症と免疫抑制による亜急性期の二次感染率の増加が関係している可能性がある。免疫機能が破綻した高齢敗血症患者では感染や炎症が遷延し重症化しやすいため速やかかつ正確な敗血症診断と集学的な治療をドラスティックに展開することが望ましい。