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遅発性呼吸停止を来したグルホシネート中毒の1例(Delayed respiratory arrest after glufosinate toxicity: a case report)
Author(s) -
Hiroyuki Koami 小網 博之,
Yuichiro Sakamoto 阪本 雄一郎,
Hisashi Imahase 今長谷 尚史,
Mayuko Yahata 八幡 真由子,
Toru Miike 三池 徹,
Takashi Iwamura 岩村 高志,
Satoshi Inoue 井上 聡
Publication year - 2015
Publication title -
nihon kyukyu igakukai zasshi: journal of japanese association for acute medicine
Language(s) - Uncategorized
Resource type - Journals
ISSN - 1883-3772
DOI - 10.1002/jja2.12004
Subject(s) - medicine , glufosinate , toxicity , anesthesia , glyphosate , agronomy , biology
要旨 遅発性に呼吸停止を来したグルホシネート中毒を経験した。症例は62歳男性で来院直前にグルホシネート含有除草剤バスタ ® を数十mLに薄めて服毒後に頻回の下痢が出現したため当院に救急搬送された。来院時血圧低下や低体温を呈し腸蠕動が亢進していた以外に特記所見は認めなかった。服毒量は重症化の目安とされる液剤100mL以下と考えられたため胃洗浄と活性炭の投与を行い救命センターに入院となった。第3病日服毒後約47時間に突然の呼吸停止を認め人工呼吸管理を開始した。その後徐々に自発呼吸が回復し第7病日に抜管した。経過良好で第15病日に退院となった。なお血中グルホシネート濃度は来院時に122µg/mLと高値を認めたものの6時間後には著明に低下し第2病日と呼吸停止が出現した第3病日には検出限界以下となっていた。バスタ ® を服用した場合急性期には界面活性剤による悪心・嘔吐下剤といった消化器症状が出現しグルホシネートによる意識障害や呼吸障害は服毒の460時間後に出現すると言われている。グルホシネート中毒の治療としては重症例ならば予防的気管挿管も検討すべきだが基本的には通常の薬物中毒に準じた対応が中心である。すなわちこの中毒では重症例をいかに予測するかが重要であり服毒量の確認とノモグラムを用いた血中濃度測定が推奨されている。しかし服毒量の推定は誤差が大きいことや血中濃度の測定ができる施設が限られていることなどいまだ障壁が多い。本邦にて遅発性呼吸障害を来した15例の文献を考察したところ高齢者に多く服毒量や症状出現時期にはかなりばらつきが見られた。現時点ではたとえ服毒量が少なく全身状態が良好であっても重症化する可能性を念頭におき服毒後72時間は人工呼吸管理が可能な集中治療室で厳重に管理すべきである。