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心臓交感神経過亢進が関連したと考えられた浸水性肺水腫の1例(Immersion pulmonary edema due to sympathetic over–activation of heart: a case report)
Author(s) -
Mariko Sugita 杉田 真理子,
Hiromichi Aoki 青木 弘道,
Mari Amino 網野 真理,
Seiji Morita 守田 誠司,
Yoshihide Nakagawa 中川 儀英,
Isotoshi Yamamoto 山本 五十年,
Sadaki Inokuchi 猪口 貞樹
Publication year - 2015
Publication title -
nihon kyukyu igakukai zasshi: journal of japanese association for acute medicine
Language(s) - Uncategorized
Resource type - Journals
ISSN - 1883-3772
DOI - 10.1002/jja2.12002
Subject(s) - medicine , pulmonary edema , edema , anesthesia , cardiology , pulmonary oedema , lung
要旨 浸水性肺水腫Immersion Pulmonary Edema以下IPEとは潜水や水泳で急性発症する肺水腫であり多くは速やかに改善するが死亡例の報告もある。IPEの発症機序は不明な点が多く非心原性肺水腫であると報告されていたが近年では一過性心筋障害が関与している可能性が報告されている。今回我々は一過性の心筋トロポニン上昇と心臓壁運動低下を認め心臓核医学検査で交感神経過亢進と考えられる所見を認めたIPE症例を経験したので報告する。【症例】52歳の女性。水温18°C最大深度8.4m平均深度5.5m潜水時間20分のSCUBAダイビングを行った。潜水中にトラブルはなかったが浮上後5分程度で呼吸困難が出現したため近医を受診し減圧症の可能性が考えられ当院に転院搬送となった。来院時の胸部単純レントゲン及び胸部単純CTでは両側肺水腫を認めた。また心筋トロポニンの軽度上昇心電図検査では非特異的STの変化心臓超音波検査では軽度の瀰漫性壁運動低下を認めた。肺水腫に伴う低酸素血症の診断で人工呼吸器管理下に集中治療を行った。翌日肺水腫と低酸素血症は著明に改善し呼吸器を離脱し第11病日に合併症なく退院となった。入院中の検査では冠動脈CTで有意狭窄はなく第2第3病日の心臓超音波検査は正常であった。また第9病日に行った心筋SPECT MIBGシンチグラフィでは明らかな心筋障害はなかったが交感神経過亢進と考えられる所見があった。経過検査結果より減圧症・動脈ガス塞栓・急性冠症候群などは否定的であった。来院時は心筋障害を示す検査結果であったが症状軽快後の心臓核医学検査では心筋障害はないことから本症例は交感神経過亢進に伴う一過性心筋障害が関与したIPEと考えた。ダイビングは運動負荷や冷水刺激等により交感神経が刺激されることからIPE発症機序の一つに交感神経過亢進による一過性心筋障害の可能性があると考える。