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ミトコンドリアは真核生物のほとんどすべての細胞内に存在するエネルギー産生装置であり,ヒトでは赤血球を 除くすべての組織にある.このため,ミトコンドリア病ではさまざまな症状を呈するが,特に呼吸によるエネルギー 依存度の高い中枢神経系,骨格筋,心筋の症状を呈することが多い1).頻度は 5,000~ 7,000人に 1人といわれ,最も 頻度の高いのは先天性代謝異常症である2).ミトコンドリア病の特徴として,あらゆる臓器に好発年齢の隔てなく発 症することがあげられる3).神経,筋のみならず心筋や肝臓などでも臓器障害を呈するため,初発症状も多種多様で ある.またミトコンドリア病はミトコンドリア遺伝(母系遺伝),常染色体・性染色体すべての遺伝形式で発病する ことが知られている4).特に幼少時期発病例はその 9割以上が核遺伝子異常によるものであり重篤な症例が多く,ミ トコンドリア脳筋症,肝症,心筋症として有名である. 鬼頭らの論文は,背景にあるミトコンドリア病が,はじめ左室心筋徹密化障害 left ventricular noncompaction (LVNC) という形で,発見,治療されていたが,次第に肥大型心筋症 Hypertrophic Cardiomyopathy (HCM)様の心形態に変化し, それに伴い心不全が増悪し,最終的に治療に反応せず死に至ったという症例報告である.ミトコンドリア心筋症の 心エコー図所見として,全周性に左室壁肥大を認めることが多く,特に中隔に比べ後壁の肥大が著明であることが 多い5).HCMでよくみられる中隔優位の肥厚と異なり,本疾患に特徴的であるとされている.生化学検査ではミトコ ンドリア機能障害を反映して,血中乳酸値の上昇および乳酸アシドーシスが認められることが多く,乳酸/ピルビ ン酸比は高値となる.小児においては,Bernierらの診断基準が主に用いられており,病理組織検査と酵素活性は非 常に重要である6).本症例では,心筋の呼吸鎖酵素活性が骨格筋や肝臓と比べ著しく低下しており,特に Complex I はほぼ活性を認めなかった.さらに電子顕微鏡でのミトコンドリア異常所見も診断の決め手となった.しかし,心筋 の病理検査や酵素活性が必須であり,確診に至るケースは限られていることから,その多彩である可能性のある臨 床像を明らかにしていくうえでも本報告は貴重である.近年,SIDSと診断されていた患者の中にミトコンドリア病 が多く含まれることがわかってきており,診断方法の簡素化が今後の課題である7).

Cardiomyopathy Associated with Mitochondrial Disease and Left Ventricular Non-Compaction: an overlapping disease entity