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チタン合金(Ti-6Al-4V: Ti64)は、軽量、非磁性、耐食 性、生体適合性など優れた特性を有するため、インプラン トや人工骨などの高組織代替材料として臨床応用されてい る。しかし、チタン合金は難削材料であり、従来の切削加 工では、生体由来のバイオニック構造を模すことは難しい。 そこで注目されているのが金属の付加製造技術(Additive Manufacturing: AM)である。AM技術は、3D-CADデータ を元に金属粉末から 3次元形状の製品を直接造形できる加 工方法である。なかでも熱源にレーザを用いた手法は、レー ザ金属積層造形法(Selective Laser Melting: SLM)と区分け されている。SLM法は、レーザを照射して、金属粉末を溶融・ 凝固して一層毎に 2次元形状を作り、これを繰り返し積み 上げて 3次元形状を造形する。そのため、従来の切削加工 や塑性加工、鋳造加工では製造出来ない複雑形状の製品を 造形できる。これらの特徴を生かして、最近では、金型や 機械部品の試作・開発、小ロット部品の製造、航空宇宙分 野のブラケットや燃料噴射装置、ケーシングなど、医療分 野ではカスタムオーダーメイドが必要となる人工関節等の 整形外科用インプラントや、歯科用ブリッジなどが応用例 として挙げられている。造形可能な材料には、Ni系合金で あるインコネルやハステロイ、鉄系では、ステンレス、マ ルエージング鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム合金 など数多くの材料が報告されており、当該技術の研究開発 および応用研究が世界各国で進められている。アメリ カ・ローレンスリバモア国立研究所のグループは、SLM法 における粉末の溶融凝固現象を、数値計算を駆使して詳細 に解析し、レーザが粉末に照射された時に発生するスパッ タリングの発生機構を解明している。さらにこれら数値 計算結果を基にステンレス鋼 316Lを造形した結果、通常 のステンレス鋼(SUS316L)の 2~ 3倍の強度を有し、且 つ従来のステンレス鋼の延性と同等の値を併せ持った造形 に成功したとの報告がある。チタン合金では、Sunらが Ti64粉末を SLM法によって造形し、多孔構造を形成して いる。Chunleiらは、Ti64を SLM法で造形し、造形後の 試料を X線回折装置(XRD)や走査型電子顕微鏡(SEM)で 評価した結果、造形後の熱処理によって、引張強度が高く なることを明らかにしている。Zhangらは、純 Tiを真空 下で造形し、表面粗さがレーザ掃引速度に依存しているこ とを明らかにしている。これらの報告は、SLMのプロセ スでは、熱源であるレーザの照射条件が造形物の機械特性 に密接に影響を及ぼしていることを示唆している。また、 SLMで造形したサンプルは、鋳造、鍛造、切削加工等の機 械加工を行った製品と比較して造形物の表面精度や密度等 の機械的特性が劣るという課題や、形成される造形物の結 晶構造に異方性があるため構造材への適用が難しいという 課題を抱えている。これらの課題を解決するために、造形 後の表面に切削加工を施したり、結晶組織を均一化させる ために、熱処理を施したりするなど、後加工プロセスに頼っ ている。しかしながら、この様な後加工プロセスは、課題 の根本的な解決とは言い難く、むしろ、工程を追加してい るので時間とコストが増えてしまっている。これらの課題 を解決するために、たとえば造形物の表面精度を低下させ る因子や内部の結晶構造を不均一にする因子を特定する必 要がある。そこで我々は、イノベーション創造プログラム (SIP)/革新的設計生産技術 /高付加価値設計・製造を実現 するレーザーコーティングプロジェクトにて、金属の溶融 凝固現象の解明とスパッタリングの抑制効果について研究 を進めている 。本報では、SLM法を用いたチタン合 金の造形におけるスパッタリングの抑制とその効果につい て詳述したい。

SLM法によるチタンの積層造形におけるスパッタリングの抑制とその効果