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植物バイオ燃料は植物の光合成能を利用し、大気中の二 酸化炭素を有機物質に変換して得られる。このため原料植 物の生育以前と比較して 、燃焼しても実質的に温暖化の原 因の 1つと目されている大気中の二酸化炭素量は変化せず、 「カーボンニュートラル燃料」とも呼ばれている。植物バイ オ燃料は、近年各国の地球温暖化対策とも相まって、世界 各地でその生産が急増しており、特に 2011年 3月の東日本 大震災において、化石燃料や原子力等の巨大エネルギー源 のみに頼ることの危うさが明確に認識されて以降は、エネ ルギー保障の面からも植物燃料への期待が高まっている。 ところが、現在実用化されているバイオエタノールやバイ オディーゼルといった植物バイオ燃料は主として、トウモ ロコシ、サトウキビ、パーム、大豆などの食用植物を原料 としており、バイオ燃料の生産量が増加するにしたがって、 原料競合による食料価格の高騰、他の農産物との生産地域 の競合、肥料や農薬による環境汚染、生産拡大のための熱 帯雨林の破壊等、数々の新たな社会問題を招いてしまった。 このような中、中南米原産の落葉低木であるジャトロファ (ナンヨウアブラギリ Jatropha curcas)が上記の問題点を克 服した新しい燃料作物として注目されてきている。 ジャトロファは、その種子中にバイオ燃料の生産に適し た流動性の高い中性脂質を重量比で 50 %以上含み、病害 虫に強く、半乾燥地や貧栄養土壌でも栽培可能な非食用植 物であり、次世代のバイオ燃料として EUや東南アジア・ アフリカなどではその試験栽培と、生産性や経済性の実証 研究が開始されている 。ところで、本植物が、食用とし て利用されない大きな理由は、その毒性にある。本植物は 油脂成分の他にリボソーム不活性化蛋白質 (RIPs)の一種で ある curcinや発癌プロモーション活性を有するホルボー ルエステル類 等を代謝産物として生産することが知ら れている。ジャトロファは、その毒性からアフリカや東南 アジアにおいて害獣の農耕地への進入を阻止するための生 け垣として利用されてきたという経緯もある。 ジャトロファの生産する毒性物質のうちタンパク質性の 毒素は、比較的熱に弱く、加熱処理によってほぼ失活さ せることが可能である。一方、ホルボールエステル類は低 分子有機化合物であり、373 K(100 °C)程度の熱処理では 分解されず残ってしまう上 、癌化を促進するため注意が 必要である。したがって、食料生産との競合を考えれば毒 性を有することは利点の一つとも考えられるが、ジャトロ ファが今後大規模かつ高密度で栽培された場合、栽培地域 において何らかの健康被害や生態系への影響を与える可能 性もあり、安全性の評価や毒性の制御は重要な研究課題と なっている。

Toxic Metabolites in a Bio-diesel Source Plant, <I>Jatropha Curcas</I> and its Detoxification