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41 ( ) 1.はじめに ワインは,ブドウから製造する最も古くからある 加工食品の一つである.古くから人類の食生活に存 在している多くの伝統的な農産物加工品の中でも, ワインの会計的評価は古くて新しい問題である.ワ インは極めて農産物的特徴を有する加工品であるに もかかわらず,砂糖やデンプン等の工業的農産物加 工食品と同様に製造原価で評価されるべきであると 考えられている.農産物の会計的評価は,日本国内 では原則として製造原価によるものとされているも のの,例外的に収穫基準が容認されている.さらに, 国際会計基準書第 41号「農業」(IAS41)は,農産物 に対して時価による評価を採用している.過去, IAS41策定プロジェクトにおいて,ワインの農産物的 特徴を巡って,ワインを IAS41の対象に含めるべき かどうか,取り上げられた経過 1) があり,ワインの 会計的評価方法の議論は,農業会計と工業会計の境 界線を知るうえで極めて重要なメルクマールとなる. 2.課題と方法 (1)課題 本稿は,ワイン原料用ブドウならびにワインの会 計的評価方法の異同とその理由について考察するこ とを課題とする. 本稿でいう「ワイン製造」は,ブドウ栽培部門と ワイン加工(醸造・貯蔵・壜詰)・販売部門の両者 を包含した用語として使用する.また,本稿ではブ ドウ栽培部門に適用される会計を「ブドウ栽培会 計」,ワイン加工・販売部門に適用する会計を「ワ イン加工会計」と呼ぶことにする. (2)研究の方法 上記の課題に対して,本稿では以下の二段階の接 近方法をとる.第一に,ワイン製造に関わる業績評 価の違い 2) の観点から,ワインの製造方法の類型化 を行う.そのうえで,これらの製造方法を複数同時 に実施しているワイナリー(A ワイナリー)を対象 に事例分析を行う.その際,A ワイナリーのブドウ 栽培部門とワイン加工・販売部門それぞれの収益・ わが国ワイン製造をめぐる損益計算の特徴と意義 ―棚卸資産の評価方法とその効果に焦点をあてて―

A Study of the Features and Significance of P/L Calculation in the Japanese Wine Industry