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I.緒 言 近年増加の傾向を示す顎機能異常患者群の内 に,頸 部の疼痛を訴えるものが少なくない.こ の事に着 目した河野,吉 田,小 林らは,咬 合異 常 に起因する頸筋疼痛の発症 メカニズムの解明 を目的として一連の研究 を行ない,そ の結果, 咬合機能時の頭位は,複 数の反射性活動に由来 する頸筋の協調活動 によって,機 能遂行に適切 な位置に保持されていることを明 らかにした1. 2,3 .こ のように,顎 口腔系の機能は,頭 部姿勢 と密接な関わ りを持つ ものであるが,頭 位の変 化 による顎口腔系への影響 としては,顎 間関係 あるいは咀嚼運動経路の変化が報告されている ものの,ク レンチ ングやブラキシズムな どの顎 機能異常 に深 く関与する持続的な咀嚼筋筋収縮 に対する影響は明 らかにされてはいない. そこで我 々は,先 に報告 したとお り,頭 位の 変化 が咀嚼筋の持続的収縮活動に及ぼす影響 を 明 らかにするため,頭 部を前屈,後 屈させた条 件下における最大咬み しめを負荷 した場合の, 咬筋,側 頭筋EMG並 びに咬合力について観察 を行なった.そ の結果,咬 筋EMGは 頭位の変 化 により著明に増減すること,ま たこの時発揮 される最大咬合力は頭位 による変動が認 められ ないという知見 を得た.こ の頭部姿勢 による咀 嚼筋活動の変動の原因 としては,下 顎に付着す る軟組織の圧縮や伸展な どの解剖学的要因によ る力の発生,あ るいは頸反射による咀嚼筋の緊 張状態の変化などが挙げ られるが,現 時点にお いては,反 射性活動の要因を支持するには不明 な点が多いと考察 した4. 今回の報告では,頭 位の変化が もたち すEM Gと 咬合力 との関係の変化をよ り詳細に検討す ることを目的として,前 報における最大随意収 縮 の負荷 に替 え,頭 部後屈の条件下 で5kg以 下の 咬合力発揮,顎 位維持さらに咀嚼運動 を負荷 し た場合の咬筋運動単位の反応を観察 し,こ れら の影響について考察 を加えた.

Head dorsal flexion and masseter EMG, bite-force in voluntary contraction