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1.はじめに 畑作では古くから増収,高品質化,周年生産, 省力化などを目的としてマルチ栽培が行われ, 果樹栽培にも適用されている.とくに,近年では,カキ,オウトウ,ナシなどを対象としてマルチ栽培が 行われ,その効果について多数の試験報告がみられる.しかし, 日本の代表的な果樹であるウメを対象と したマルチ栽培の効果については検討した事例がない. そこで,ウメの生育にとって適切な水管理の方法 を検討することを目的として実験を行った.蒸発散が最盛期となる夏季から秋季において,地表面をビニー ルで被覆しマルチ区と,ビニールで被覆しない非マルチ区を設定することによって,ビニールマルチによ る土壌水分環境などの変化が秋季の落葉やその後のウメの収量と品質に与える影響を明らかにし,ウメ栽 培へのマルチングの効果を検証した. 2.実験方法 2.1試験圃場の概要 岐阜大学柳戸農場内にある樹齢20年の梅(品種:紅サシ)を対象に実験を実施した. 土壌は礫成分(約5%)が少なく砂成分(約 50%)の多い粒度組成で,砂質植壌土(国際土壌学会法)に分 類される.固相率は 30~40%の範囲にあり,表層(深さ 0~20cm)の透水係数が 10cm/s,下層(深さ 20 ~40cm)が10cm/sと排水性のよい土層である.また,容易有効水分量(pF2.0~3.0)は各層とも約10% 前後と比較的保水性の低い土壌である.過去30年間(1981~2010年)の平均年降水量は1,827mm,年平均 気温は15.8°C(いずれも岐阜気象台)である. 2.2 実験方法 6本の供試樹(A~F)を選定し2010年3月から実験を開始した.蒸散が最盛期となる夏季 以降の6ヶ月間(2010年 7月 1日~12月30日)に,降雨が直接土壌面に浸透しないよう 3本の供試樹(D ~F)の土壌面を黒色ビニールで被覆した試験区(84m)(以下,「マルチ区」)と,他の 3 本の供試樹(A ~C)ついては土壌面を被覆しない試験区(84m)(以下、「非マルチ区」)を設けた.この期間には,ビニ ール被覆の有無による土壌水分状態の相違を調べるために両試験区の 5,15,25,35,45cmの深さに TDR 土壌水分計を設置した.また, 落葉が開始する2010年10月20日から約2ヵ月間,両試験区の落葉数を毎 日観測した.翌年の 2011年 3~6月に,6本の供試樹の開花数,結実数,個体重,総収量,糖度等を測定 した.2011年 7月からの 2年目の実験では,供試樹の個体差の影響を除外するために,供試樹 A~Cをマ ルチ区,D~Fを非マルチ区とし,深さ方向の土壌水分に加えて地温も測定し,上記と同様の実験を繰り返 した. 3.結果及び考察 ビニールによる被覆期間(7月 1日~12月 31日)について深さ 0~50cmの平均土壌水 分量(体積含水率%)を Fig.1に示す.非マルチ区は降雨が土壌面から直接浸透しやすいので降雨時には 顕著な土壌水分増加が見られたが,干天が続くと蒸散に加えて土壌面蒸発によって土壌水分量が著しく減 少する.とくに,干天が17日間継続した 2010年の9月8日では,非マルチ区の平均土壌水分量は 17%ま で減少し,とくに根群が集中する深さ 20cmまでの体積含水率は 10%まで低下し,ほぼ成長阻害水分点に 達していた.一方,マルチ区は土壌面をビニールで被覆していることから直接降雨の侵入は少ないが,降 雨時には土壌水分の増加が確認できる.これは,マルチ被覆外の土壌面から浸透した雨水が側方移動して影 響しているものと予想される.しかし,干天時には土壌面蒸発が抑制されることから,非マルチ区に比べて 土壌水分の減少が著しく抑制されていた.2011年に測定した深さ 35cmまでの平均地温の経時変化を Fig.2 に示す.マルチ区の7月1日から 10月31日までの平均地温は非マルチ区よりマルチ区の方が高くなって [320(P)] H25 農業農村工学会大会講演会講演要旨集

The Influence of Mulch Culture to the Growth and Yield of Plum