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釜炒り茶は,蒸す代わりに釜で炒ることによって茶葉 の酸化酵素を失活するところに特徴がある。製茶工程が 機械化される以前は,佐賀県嬉野市を主産地とする嬉野 製と,熊本県や宮崎県の山間地で生産される青柳製があ った。嬉野製の釜は約45度に傾斜している製茶専用の釜 に対して,青柳製は水平に釜が設置してあり,豆やタケ ノコを煮たり,楮 こうぞ や三 みつまた 椏を蒸したりする時にも用いられ た汎用性の釜である。 青柳の名称は元禄時代(1688~1704)に番所の役人が, 矢部および馬 ま 見 み は ら 原(いずれも山都町)の茶の品質が優秀 であることから「青柳」と命名し,藩主に献上したこと に由来する。一説には,加藤清正によって朝鮮半島か ら連れてこられた大工,石工,左官などの技術者が,熊 本城の築城後に加 か せ む ろ 勢群(山都町)に定住し,ヤマチャで 茶をつくり,城主へ献上したことが後世に伝わって青柳 製の釜炒り茶となった。太田義十氏によると,青柳製 は熊本県の特産の釜炒り茶であり,その製法は一般の釜 炒り茶に準ずるが,若芽を用いて青みを帯びるように仕 上げることで名付けられたとしている。 さて,熊本県の茶業は豊富なヤマチャを利用して発展 した経緯があるので,必然と茶生産は中山間地域で 行われている。釜炒り茶についても,ヤマチャ地帯を中 心に中山間地で生産されていた(図1)。しかし,昭和 40年代に製茶工場の規模拡大や合併等による新設に伴 い,蒸し製緑茶への茶種変更が行われて,釜炒り茶の生 産量は減少することになった(図2)。 一方,自家消費用の釜炒り茶については熊本県内の各 地で見られたし,筆者も幼少の頃に製造を手伝った記憶 がある。また,平成初期に県南の芦北普及所に勤務した 際には,PTA主催の小学校の茶品評会に,少数である が手炒り製の釜炒り茶が出品されていたことを覚えてい る。しかし,釜炒り茶を作っていた農家が高齢化したこ と,さらにはかまどを据えた住宅が無くなったこと等に

Kamairicha (Pan Fired Tea) in Aoyagi Style in Kumamoto