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地熱系は熱源(マグマやそれが固結した高温貫 入岩体など),貯留構造(断層など),および地熱 流体という 3要素から成っている。科学が現象の より本質的な原因を追究するという視点から見れ ば,この地熱系の 3要素の中で,熱源など前者ほ ど重要な意味をもつ。他方,地熱資源を利用した 地熱発電所の開発といった,具体的な地熱開発を 考えるならば,発電媒体である地熱流体の探査や 研究が直接的に重要な意味をもつ。 筆者は地熱地質学を専門としていたため,40年 間の地熱資源研究歴の大半をカルデラや貫入岩体 や断層など,熱源や貯留構造の調査研究に費やし てきた。しかし,筆者が国の地熱技術開発プロ ジェクト等に巻き込まれて行くにつれて,地熱流 体の研究の重要性を痛感し,40年間の後期には, 全国の温泉データを集めて,日本列島の浸透率分 布を推定し(Muraoka et al., 2006),日本の熱水 系アトラスを出版するなど(村岡ほか,2007), 微力ながら地熱流体に近づくように努力してき た。また,40年間の地熱資源研究歴のうち,32年 間を工業技術院地質調査所および後継の産業技術 総合研究所で過ごし,その後の 8年間を弘前大学 北日本新エネルギー研究所(現:弘前大学地域戦 略研究所新エネルギー研究部門)で過ごした。こ の研究所の地球熱利用総合工学部門(当時)は, 筆者が地熱地質学を担当し,井岡聖一郎准教授 (当時・現教授)が地熱流体の水文学や地下水化 学を担当して,運営してきたものである。 地下水学会誌 第 60 巻第 4号 463 ~ 474(2018)

Expectation for hydrology in the field of geothermal resource exploration and exploitation