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地球の窒素循環に関わる問題は,生物多様性の 喪失や気候変動等と共に,人間活動による影響が これまで過去 1万年にわたり安定していた地球・ 人間システムを大きく変革させてしまう可能性の ある『臨界点』を超えている,重大な環境問題 であることが指摘されている(Rockström et al., 2009)。この問題の一つの大きな要因は,20世紀 初頭に大気中に存在する窒素をアンモニア態窒素 として固定する技術が開発され,それまで希少と されてきた肥料が化学的な手法により大量に製 造,使用されるようになったことであろう。地球 表層に散布された過剰な窒素成分は,湖や沿岸域 において富栄養化を引き起こす原因となり,ま た,地中においては地下水汚染という重大な問題 を引き起こしている。 帯水層中における窒素成分の蓄積は,窒素循環 の攪乱のみならず,水質の観点から地下水資源の 持続利用にとって考慮しなければならない重要な 問題である。このような重要性から,地域の地下 水硝酸汚染の実態や脱窒等の帯水層中で起こる自 然浄化現象の解明,また,人工の脱窒壁を用いた 浄化技術の開発について,本会誌でも幾度となく 貴重な研究が報告されてきた(例えば,鶴巻, 1992;広城ほか,1996;近藤ほか,1997;井岡・ 田瀬,2004;李・田瀬,2007;齋藤・小野寺, 2011;副島ほか,2012)。これらの研究では,地 域における硝酸性窒素濃度分布特性や河畔域もし くは局所スケールでの窒素挙動に注目した報告が なされてきた。一方,最近10年の間でも技術革新 や手法開発が目覚ましく進み,現象解明に対する 格段のスケールアップが可能となってきているこ とも事実である。 例えば,アメリカの研究グループが開発した 『脱窒菌法』による同位体測定技術(Sigman et al., 2001; Casciotti et al., 2002)は,これまで測定 が困難であった低濃度水試料について硝酸性窒素 安定同位体比のみならず,硝酸性酸素同位体比の 測定を可能にした。この手法が日本で初めて生態 学の分野で適応されたのは2005年頃のことであ る。それから10年,本手法は地下水研究者の間で 地下水学会誌 第 57 巻第 4号 435 ~ 437(2015)

Recent investigations for revealing nitrate behavior in variety of aquifers in Kyushu and Okinawa region