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ウイルスによるdiffuse outbreakは希と思われるかも 知れないが,実は日常的に起こりうる.すなわち牡蠣等 の二枚貝を介した食中毒である.養殖海域でノロウイル ス(NoV)等の腸管系ウイルスの汚染を受けることは原材 料汚染に他ならず,そのような汚染は毎年恒常的に各地 で起こっている.腸管系ウイルスに汚染された二枚貝が 各地に流通し,生あるいは加熱不足で喫食した場合,散 発的に,あるいは集団で食中毒を起こすことになる.本 稿執筆中の2018年12月に札幌市内で牡蠣による食中毒 が多発したとの報道がなされた.12月14日から27日の2 週間の間に飲食店や家庭で26事例が発生し,このうち4 事例は札幌市保健所によってNoVによる食中毒事件と断 定されている(北海道新聞: 2018年12月29日電子版). これらの事例の一部はdiffuse outbreakの疑いがある. 一方,2017年1月から2月に発生した刻み海苔が関連 するNoV食中毒事例はNoVによる食中毒事例のうち学 問的にも,社会的にも,また行政対応的にも最もインパ クトのある事例であった17,18,21).本事例はNoV食中毒の 対策を講じる上で様々な教訓を与える事例となったが, その一つにウイルスによるdiffuse outbreakへの対応が ある.本稿では,この刻み海苔関連事例を含み,筆者が 経験したウイルスによるdiffuse outbreak 3事例につい て紹介するとともに,その調査体制の現状と課題につい てまとめ,私見ではあるが今後望まれる調査体制や検査 体制についても触れたい. なお,我が国では,diffuse outbreakを意味する言葉 として,広域集団(食中毒)事例,散在的集団(食中 毒)事例,散発型集団(食中毒)事例など,様々な表現 が用いられているが,いずれもdiffuse outbreakの本質 を表しているとは言い難い.そもそも,刻み海苔事例は 後述のとおり同一汚染食品による集団食中毒が各地で発 生した事例であり,散発的な発生ではない.言うまでも なく,「diffuse」は「分散した,拡散した,広がった」 などを意味する単語であり,「diffuse outbreak」は「同 一汚染食品が各地に流通した(すなわち,各地に分散し た)ために発生した複数の発生事例をまとめて,全体と して一つの集団発生として捉えたもの」を意味する(Nativeでは「outbreak」は集団発生を意味する.個別の (散発)事例は「case」を用いる).そのような理由か ら,本稿ではdiffuse outbreakを分散型広域食中毒事例 と記載することとする.なお,「広域」は必ずしも必要 ではないが,後述のようにdiffuse outbreakの対応には 自治体間の連携が重要であることから,それを明示する 意味で用いた.

Investigation and Its Problems of Diffuse Outbreaks Caused by Foodborne Viruses