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ルールには目的がある。例えば車両の左側通行 原則1)や「赤は止まれ,青は進める」2)ことなどを 含む交通ルールは,「道路における危険を防止し, その他交通の安全と円滑を図り,及び道路の交通 に起因する障害の防止に資すること」を目的とす る3)。人や車両が行き交う交通において,「危険の 防止」と「障害の防止」をしつつ「安全」と「円滑」 を図ることが道路交通ルールにおける本源的な目 的なのである。 換言すれば,道路交通法によって体系だてられ る交通ルールは,「流れ」を維持し,阻害しない ためにあるといえよう。それによって人命が守ら れ,経済損失の最小化にもつながるのだ。 道路交通法が有する132か条および枝番号付き の各条文は,ひとつひとつ,すべてがこの目的を 実現するための規定である。したがって各条文の 解釈にあたっては常にこの目的に照らし,それに 適うよう解釈,運用することが求められる。目的 規定は,全条文をバラバラなものとせず,全体が 一貫性を持った有機的な体系として機能するため の「要」なのだ。当該法体系の「軸」である。 一例として挙げた道路交通法に限らず戦後に制 定されたほとんどの法律には,冒頭にその法律の 目的や趣旨が規定されている。また法律のみなら ず,各種のゲームやスポーツのルールにも目的が ある。ルールがあるからこそゲームや競技は進展 し,安全が確保され,面白くなるのだ。ルールに よって進捗し,「流れ」が確保されるのである。 さて現行民法はどうか。残念ながら目的規定を 欠いている。19世紀に起草された当時,立法にあ たって冒頭に目的規定を置く習慣がなかったので あるから,目的規定を欠いていること自体は自然 なことである。 けれども現行法のほとんどが目的規定を持つに 至った今日,私法の一般法たる民法に目的規定が ないという現状をどう見るか。一般法であるから 目的規定は不要であるという立場もあろう。しか し,およそルールには目的が不可欠であると考え るなら,目的規定の欠如は現行民法の最大の欠缺 といってもよいほど重大な欠陥であろう。私は一 般法たる民法にこそ,目的規定が必要だと考える。 実際,判例の蓄積と戦後の改正を経て,第 1編 第 1章に通則が置かれるに至っている。しかしそ れらは,未だ民法の目的そのものではない。目的 規定があれば,各条文の解釈,適用の指針となる が,現行民法はそれがないまま,115年間使われ 続けてきたのだ。 民法はどこに向かうのか4)。 特集 民法改正の不動産実務への影響 【論説】

Investigation into General Principles and the Structure of Recodifying Civil Code