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ポリフェノールとも呼ばれるフラボノイドおよびその配 糖体は植物二次代謝物の一種であり,われわれは日常的に 食物の成分として,例えば野菜やワインなどとして摂取し ています.フラボノイド類は抗酸化作用や,抗がん作用, 抗ウイルス作用などさまざまな生理活性を持つことで知ら れており,日々の健康維持に使われています 1),2).芳香族 環に置換した水酸基 (‒OH) はフェノール性水酸基として 機能し,さまざまな生理活性を発揮します.フラボノイド 骨格やそれらのフェノール基,糖鎖置換位置により活性も 変化します.これまで植物中に含まれるフラボノイド配糖 体の分析・構造解析についてはエレクトロスプレーイオン 化 (Electrospray ionization; ESI)・液体クロマトグラフィー・ 質量分析 (liquid chromatography mass spectrometry; LC-MS) を利用したタンデムMS/MSもしくは多段階MS(MSn)の 分析が行われており,糖鎖の置換位置が異なる構造異性体 などの分析も行われています 3)~7).近年,多種類のフラボ ノイド配糖体が植物組織のどこに局在しているのか?を質 量分析を使って分子イメージングを行うイメージングMS でも分析されるようになりました.これには固体の表面の 分析に使われるマトリックス支援レーザー脱離イオン化 質量分析(matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry; MALDI-MS) が使われています 8)~11).イメー ジングMSは植物中のフラボノイド配糖体がどのように働 いているのか?を明らかにする研究に非常に有用です.そ の際,全く同じ質量を持った構造異性体の存在は厄介で す.我々はフラボノイド配糖体の構造異性体に興味を持ち 研究を行いました. Fig. 1に示す上の4つのフラボノイド配糖体は同じ質量 を持ち,それぞれヒドロキシ基やグルコース置換位置が異 なる構造異性体です.我々はMALDI-MSで,これらの識 別に興味を持ち研究を行いました.その中で,負イオン化 時には脱プロトン化分子[M-H]-に加えて予想もしない 1, 2 Da少ないピークを観測し,これらはフェノール基から ホモリティック開裂で水素ラジカルが脱離することで生成 した中性ラジカルイオン [M-H・-H]-, [M-2H・-H]-で あることを明らかにしました.またこれらの現象の一部は MALDI-MSに特有のレーザー励起により生成されている こともわかりました.ここでは,MALDIというイオン化 で,ポリフェノールのイオン化過程,分解過程で生成する フェノキシラジカルの生成メカニズムを詳細に研究するこ とで,フラボノイド配糖体の構造異性体を識別した研究例 を紹介します 12). J. Mass Spectrom. Soc. Jpn. Vol. 66, No. 5, 2018

Distinguishing among Flavonoid Glycoside Isomers from Hydrogen Radical Removal in UV-MALDI-MS