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日本の環境教育の源流の一つである自然保護教 育は、自然保護の実践と環境問題の解決に資する 人を育てることを目指した目的教育であり、その 伝統はその後の環境教育にも引き継がれている。 しかし、自然保護教育が誕生した1960年代(沼田, 1987)と比較して、自然を取り巻く状況は悪化し、 環境問題の時間的・空間的拡大、複雑化、多様化 が進行している。特に、生物多様性の悪化や損失 は著しく、現在では環境を保護するだけではな く、悪化した生態系の回復や復元、地域の生態系 サービス機能の向上、絶滅した生物の再導入(ト キやコウノトリ)とその野生復帰を可能にするた めの減農薬の農業実践や里山管理などの解決策が 必要で、そのためには自然科学分野だけでなく、 社会科学分野、生涯教育、政策、持続可能性、な どを含む多様で、統合的なアプローチが求められ ている。 生物多様性の保全に特化し、統合的なアプロー チを用いる新たな学際的な学問分野として保全生 物学がある。保全生物学は、地球規模の環境の危 機に呼応して、1980年代末に米国で誕生し、人 類に共通な価値を保全することを使命とした、 「価値に中立でない」新たな学際的な環境科学分 野である。「価値に中立でない」とは、従来、科 学研究を行うには、客観的、中立的な立場を取る べきで、特定の価値を持ち込むべきではなく、「価 値に対して中立であるべき」との考え方が支配的 であった。しかし、保全生物学は、「価値に中立 でない」明確な目的とミッション(学問の使命) をもった学問分野である。保全生物学は、「生物 多様性」、「健全な生態系」、「社会と環境の持続可 能性」を価値ヒエラルヒーの上位に位置づけ、生 物多様性の保全と生態系の回復のために、理論と 実践の2つを車輪の両輪とし、両者のフィード バックによって基礎(理論)と応用(実践)の両 者が機能する学問分野であると言える(プリマッ ク・小堀 2008)。また、保全生物学では、これら の課題の解決には、現状を科学的に把握するだけ では不十分であり、現在の経済・社会システム、 生活様式における価値ヒエラルヒーの再構築が必 要との認識から統合的・学際的なアプローチを とっている。 保全生物学に立脚した環境教育は保全教育 (Conservation Education) と 呼 ば れ て い る (Trombulak et al.,2004)。 本報告のタイトルにある「地域をつなぐ」は、 地域をつなぐ生物多様性保全を目指した生涯 学習 ― 新たな市民科学の確立に向けて

Lifelong Learning Geared toward Conservation of Biodiversity in and among Communities