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1. はじめに 近年,急激な人口減少・少子高齢化等の社会経済の状況が地域 づくりの考え方を大きく変化させ,「地域再生」,「地方創生」が期 待される中,「地域課題解決」に対応した,多様な主体と地域の企 業等の協働による「共助社会づくり」の推進や,「ソーシャルビジ ネス(≒地域課題解決型事業)」の展開,さらには「地域発イノベ ーションの創出」等が求められている1)。 この「地域課題解決」という視点は都市公園等でも求められて おり,社会が成熟し,都市基盤も一定程度整備された現代におい ては,自然・緑の機能が都市・地域・市民のために発揮されるよ うに政策を転換すべきであるとされ,例えば,地方創生が課題の 都市での個性と活力のある都市づくりへの貢献や,地域コミュニ ティの希薄化が課題の都市での地域住民が自律的に運営する緑と オープンスペースによるやすらぎ創出等が求められている2)。 他方で,近年,企業経営においては,共通価値の創造3)(以下, CSV とする。)」という考え方が注目されている。「CSV」とは, 社会的課題の解決と企業の競争力向上を同時に実現するイノベー ティブな事業展開を実施することにより,「経済的価値(利益)」 と,「社会的価値」を同時に実現する「共通価値の創造」が企業成 長の推進力となるという考え方である。我が国の一部の建設業4) においては,既に明確に CSV を念頭に入れた企業経営が進めら れており4),また,一部の造園業においてもCSVと関わる「地域 課題解決」に向けた事業展開が確認されている5)。 また,造園業には,造園建設業の市場の大幅縮小6),入札・制 度改革による市場競争激化の中,新たな社会的要請をビジネスと 捉えた新たな事業展開,業態変革の必要性が指摘7)されている。 したがって,今後,新たな事業展開が求められる「造園業」に おいても,都市公園等の自然・緑を活用した「イノベーション」 に向け,「地域課題解決」に取り組むと同時に、自社の経済的価値 (利益)も実現するCSVが重要な観点になると考えられる。 すなわち,自然・緑の活用という独自性を有する「造園業」が CSVを経営戦略として掲げ,「地域課題解決」への取り組みを図 る中で,継続性を担保するためにも必要となる「経済的価値」を 向上させつつ「社会的価値」の創出のあり方を再考し,新たな事 業展開を図るとともに,事業展開においても多様な主体と連携し ながら「地域発イノベーションの創出」における中心的な役割を 担う等,造園業の「新たな業態」としての変革が社会的にも期待 されている状況にあると考えられる。 このような状況のもと,「造園学」においても「CSV」を念頭 に入れた「地域課題解決型事業」の展開についての関連研究が萌 芽的ながら始まってきている。 例えば,金岡ら5)は,増田(2006)8)の指摘に対し,造園産業が 社会といかに関わり、どのように貢献していくべきかについて再 考し,CSVの実現に向け,企業と社会が一体化して対応すべきと 指摘し,富山県の造園業者を対象とした調査により,地域課題解 決型事業の実施の有無や意識構造等を把握し,造園業における地 域課題解決型事業による CSV の推進に関する重要な要因を抽出 した。一方で,この研究では,地域課題解決型事業の実施内容・ 効果との関係の検証や実証的なデータに基づいた理論的基盤を整 備すべきこと,「全国」を対象とした造園産業全体に適応しうる調 査検証を行うこと等を課題としているが,このような課題に対応 した研究はみられない。 そこで本研究では,全国の造園建設業を調査対象とし,その事 業展開に関する意識や地域課題解決型事業の実施状況や意識等を 把握し,共通価値の創造(CSV)の観点からみた造園建設業によ る地域課題解決型事業の展開の現状や事業展開能力の向上のため の方向性について明らかにすること等を目的とする。

A study on development of regional problem solution business of landscape construction industry from the viewpoint of Creating Shared Value