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平成 12(2000)年の「地方分権一括法」の施行以降,地方自 治体は,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を 広く担うようになり,市民参加型のまちづくりが推進されるよう になった。それに伴い,公共財としての庭園の保全と利活用に関 しても市民が参加する機会が増えてきた。たとえば,東京都では 平成 17(2005)年以降,一般市民向けに「庭園管理作業ボラン ティア養成講座」を開講しており,修了者は「庭園管理作業ボラ ンティア」として,都立の9庭園における維持管理の補助作業ボ ランティアに従事している 1) 。また,平成 6(1994)年ごろから 増え始めた一般市民による観光ボランティア 2) は,現在,広く全 国的に実施され 3) ,庭園の歴史や魅力などの普及活動の一端を担 っているものと思われる。 これらの活動は庭園の保全と利活用に直接関与する取組である が,その他,保全と利活用の方針策定に意見を提示するというか たちの市民参加も考えられる。このような市民意見を探った調査 として,下村ら 4) は,京都の有名公開庭園への訪問者を対象にア ンケート調査を実施し,観光客への情報提供のあり方について広 く意見を集約し,今後のあり方を検討している。 意見提示に関しては,「地方分権一括法」の施行により,行政の 政策立案,実施,評価などに,従来にも増して市民意見を反映さ せる手続きが推進されるようになった。このような手続には,パ ブリックコメント,公聴会,審議会,住民投票,意識調査やアン ケート調査,意見交換会,フォーラム,シンポジウム,ワークシ ョップ方式などがあり,各自治体が条例等で定めている 5) 。 このうちパブリックコメントは,一般市民の意見を広く求める ことができる制度として,近年,多くの自治体で導入の動きが広 がりつつある 6) 。パブリックコメントとは,「国や地方自治体の意 思決定過程において広く国民や住民等に案件を公表し,それに対 して提出された意見・情報を考慮しつつ意思決定を行う 6) 」手続 きを言う。なお,パブリックコメントはしばしば「パブコメ」と 表現されるため,本論においても,以下,適宜この略称によって 記載する。わが国では,平成11(1999)年に閣議決定された「規 制の設定又は改廃に係る意見提出手続」に基づいて導入され,同 年 4 月から全省庁で実施されるようになった。その後,平成 17 (2005)年には「行政手続法」が改正され,国民の権利や義務に 直接かかわる命令などについてパブコメが義務づけられるように なった。同法の施行に伴い,地方公共団体でもパブコメ制度に関 する条例などの制定が進み,全国の制定率は平成 21(2009)年 10月現在で43.9%となっている 7。こうした背景から,公共財と しての庭園を管理する自治体が,その保全と利活用に関する計画 等を策定する際にもパブコメを実施するようになってきた。 しかし,パブコメは導入後 10 年程度の新しい制度であり,平 成 20(2008)年の内閣府の調査 8によると,パブコメ制度につ いて「知らない」との回答が87.7%となっており,一般国民の認 知度はかなり低い。また,今日のパブコメ制度については,手続 対象,制度基盤,情報提供や手続き統制のあり方など,多くの課 題が指摘され,改善が望まれている状況でもある 6) 。 一方,パブコメは,その結果を通じて当該案件に対する多様な 考え方を知りうることから,これまでさまざまな研究が行われて きた。たとえば,提出意見や回答の精査による案件の問題点や論 点の探索 9~11) ,提出意見の反映度合いからの案件の限界の推定 12) , あるいは,提出意見からのキーワード抽出による意見の傾向の整 理 13,14) などがあり,切り口は多様である。 これらの先行研究を参考に,本調査では,公共財としての庭園 を取り上げ,その保全および利活用に関するパブコメ案件に対す る提出意見や回答を調査した。予備調査の結果,単一案件に対す る提出意見が少ないと見込まれたことから,本調査では,上述の 先行研究とは異なり,庭園の管理方針策定に関連する複数のパブ コメ案件を横断的に調査し,実施方法や提出意見およびその回答 を精査した上で,パブコメを活かした市民参加型の庭園管理の今 後の可能性を考察することとした。 公共財としての庭園の保全および利活用に対するパブリックコメントの現状 Actual Conditions of Public Comments-aided Citizen Participation in Conservation and Practical Use of Gardens as Public Properties 加藤 博* 長友 大幸** 下村 孝*** Hiroshi KATO Hiroyuki NAGATOMO Takashi SHIMOMURA Abstract: Recently, the public comment, one of the opportunities for citizens to participate in administration, is conducted not only in central government ministries and agencies, but also in local governments in Japan. In this study, we investigated actual conditions of public comments-aided citizen participation in conservation and practical use of gardens as public properties. We searched the case of public comments which were provided more than one opinion about conservation and practical use of gardens through internet. As results, we picked out 11 cases of public comment and 36 provided comments. Examining their methods, the comments, and replies from implementing administration agencies, we found some tendencies among them as described below. The offering information and prepared means for providing comments were not enough to promote citizen participation. The comments about conservation of gardens were more than their practical use. Although various subjects of the public comments were implemented, some administration agencies seamed not so positive in implementation of them. We considered that it was desired to increase public comment procedures through ensuring more fairness and transparency, to promote garden management system depended on citizen participation.