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脂肪腫は間葉系腫瘍に属する良性腫瘍の1つ である. 脂肪腫は中胚葉性組織由来で全身のあらゆる部位に発生 する. 脂肪腫は良性軟部腫瘍の20%を 占め, 最も発生頻 度が高い. 好発部位は背部, 胸壁, 大腿部, 頭頸部であ る. この うち頭頸部には全身の脂肪腫の22%が 発生する. 脂肪腫の発育は緩慢で無症状であるため病悩期間は一般 に長期間である. 脂肪腫の治療としては, 外科的に腫瘍 の全摘出が大切であるが, 頭頸部領域に発生 した脂肪腫 ではその進展部位によっては摘出手術が困難である場合 が多い. 症例: 67歳, 男性. 1992年 頃より右側頭部が次第に腫 脹 し, 眼鏡装用の際邪魔になるため1993年12月 に某病院 にて耳前部切開により側頭窩の脂肪腫摘出術を受けた. 1994年3月 頃よ り右側頭部 と右頬部の腫脹が出現 し (図 1), 当科に紹介 された. 初診時, 右側頭部に直径4.5 cmの 表面平滑, 弾性軟の腫瘤を触知 した. また右頬粘 膜部にも同様の弾性軟の腫瘤を触知 した (図2). MRI 水平断像 (T1) では側頭筋表面に高信号の扁平な腫瘍像 を認め, 前額断像 (T1) では側頭窩から頬骨弓下を通 り 頬筋外側で高信号を呈 している大きなダソベル様の腫瘍 像を認めた (図3). 1995年2月 に全身麻酔下に腫瘍摘出 術を施行 した. 本例のように顔面深部に位置する腫瘍を 一塊として摘出する際には顔面神経分枝や耳下腺管を損 傷 しない様に気をつけなけれぼならない. 本例では通常 の耳下腺腫瘍摘出術の皮膚切開線を側頭部ならびに下顎 縁に沿って延長 し耳下腺被膜上で広 く皮膚弁を挙上 した (図4). 手術時のオ リエンテーションを容易とする目的 で執刀前に2倍 希釈 したメチ レンブルーを耳下腺管 より 1.5ml注 入 し耳下腺組織を染色 した. 耳下腺浅葉前端 部で顔面神経頬枝 と耳下腺管を確認 し, 注意 しながら頬 部の腫瘍:剥離を進めた. 側頭部では顔面神経側頭枝を確 認, 温存 し, 腫瘍に側頭筋膜を一部付けて剥離を進めた 腫瘍 と周囲組織の癒着はほとんどなく, 剥離操作は比較 的容易であった. 最後に頬骨内側面で腫瘍を剥離した後 側頭部の腫瘍を頬骨下にくぐらせて頬部に出し, 顔面神 経頬 (筋) 枝 と下顎縁枝の間から一塊として摘出した (図 5). 病理学的には腫瘍は薄い繊維性被膜構造を有 し, 内部 に成熟 した脂肪細胞を有する脂肪腫であった(図 6). 本症例は初回手術後短期間で再発増大 し, 側頭窩から 頬骨下を通 って頬部にまで広 く進展したと考えられる. 良性腫瘍 といえども確実に全摘出することが重要であ り, そのためには広 くて良好な手術野を確保することが肝要 である. 症例によっては数回の再発後に脂肪肉腫と診断 されることもあるので長期にわたる経過観察が必要であ る.

A Case Report of Lipoma which Extended from Temporal Fossa to Cheek Region.