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約 2億 5千万年前の古生代ペルム紀末において,顕生代 で最大規模の大量絶滅事件が起きた(Sepkoski, 1984; Erwin, 2006; Bottjer et al., 2008など).従来,この絶滅事 件は単一の事件とみなされてきたが,Jin et al.(1994)およ び Stanley and Yang(1994)は,この事件が実際には,ペル ム紀中-後期(Guadalupian-Lopingian; G-L)境界およびペ ルム紀-トリアス紀(Permian-Triassic; P-T)境界において 起きた,2段階の絶滅事件からなることを指摘した.また化 石記録に基づき,G-L境界においては約 70%の,P-T境界 においては約 80%の浅海棲無脊椎動物種が絶滅したと推定 した(Stanley and Yang, 1994). G-L 境界は,地球規模の長期的海洋無酸素事件(superanoxia)の開始時期と近接することから,古生代末の表層環 境変動を考察する上で特に重要と考えられる(Isozaki , 1997, 2007).これまでに G-L境界の層序は,世界層序標準 セクション・地点である蓬莱灘(Penglaitan)セクション (Jin et al., 2006)を含む南中国西部の複数のセクションの 他,南アフリカや南極大陸(Retallack et al., 2006),西南日 本の上 か 村 むら セクションや赤坂セクション(Ota and Isozaki, 2006)などにおいて検討されている.また G-L境界におけ る絶滅事件の原因として,地球規模の海退(Jin et al., 1994), 峨眉山洪水玄武岩の噴出に伴う火成活動(Zhou et al., 2002; Wignall et al., 2009など)およびそれに伴う大規模のメタン 噴出(Retallack et al., 2006),全球的寒冷化事件(Isozaki et al., 2007a),プルーム起源の爆発的火成活動(Isozaki, 2007)などが提案されてきたが,その詳細はいまだ未解明で ある. G-L境界前後においては,浅海域の大量絶滅事件と深海域 の海洋無酸素事件の開始に加えて,様々な特異な地質事件が 起きたことから,これらの間にはなんらかの因果関係が存在 する可能性が示唆されている(Isozaki, 2009).そしてこの 因果関係を明らかにするためには,これまで注目されてこな かった,浅海域の中でも比較的深い海域における G-L境界 前後の環境変動の情報が重要と考えられる. 南中国地塊の中-上部ペルム系および下部トリアス系は, フズリナやサンゴなどの多様な浅海生物化石を多産し,世界 で最も保存良好な層序学的連続性を保持するとされる (Zhao et al., 1981; Yang et al., 1987; Jin et al., 1998など). その中でも,南中国地塊北西縁にあたる四川省北部には,他 地域と比較して深い堆積相の地層が分布する(Zhu et al., 1999; Wang and Jin, 2000など)(Fig. 1.D).例えば,同地 域の上寺(Shangsi)セクションにおいては,これまでに P地質学雑誌 第 116巻 第 7号 388-399ページ,2010年 7月 Jour. Geol. Soc. Japan, Vol. 116, No. 7, p. 388-399, July 2010

chishitsugaku zasshi

Lithostratigraphy of Upper Guadalupian (Middle Permian) rocks at Chaotian in Sichuan, South China: Secular change in sea level and redox condition of the sedimentary environment