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低線量における発がん過程 を念頭においた新しい発が ん数理モデルの開発について報告する。低線量域におけ る発がんの リスク評価を行 う際に重要な線量 効果関係 は, 低線量域 においては頻度 の減少から統計的に有意な データを取得するには大量の実験データが必要 となるが, 実質的にそのような大量のデータを得ることは非常に困 難である。また分子生物学の進歩に伴い新たに様々な知 見が見つかってお り, メカニズムベースの発がんリスク 研究が望まれている状況 と言える。 このような現状において, 実験技術 におけるブレイク スルーを求めることは1つ の回答であると思われるが, メカニズムに基づいた数理モデルによる研究が有効な手 法の1つ と考えられる。 これまで研究されてきた発がん モデルには, いわゆる多段階モデル と呼ばれる一群のモ デルが存在する1)。多段階モデルは疫学 において知 られ ている発がん率が年齢のべ き乗に比例するとい うデータ をベースに開発されている。また, 実際のがん化過程 に おいて, がんの段階を進行 させるものは遺伝子の突然変 異であることが大腸がんにおける一連の研究から示 され た23。 これまでの研究か ら判明してきた発がん過程の複雑 さ に加 えて, 元来腫瘍の形成 においてはがん細胞自体の増 殖のみを考慮 していたが, 細胞闇コミュニケーションに よると思われるバイスタンダー効果の存在3)や, 細胞の 形態 と細胞応答の関係4)が 注 目されつつあり, 元来の発 がんモデルでは説明しきれない新たな現象 に関する知見 が増加 してきている。 これらを踏まえ, 以下のような特徴を持つ数理モデル の開発は非常に意義があると思われる。(1)系 のスケー ルは細胞レベルであ り, 細胞の形状を含めた議論が可能 である, (2)細 胞間コミュニケーションをダイレク トに 持つ, (3)培 養系 におけるコロニー形成等のデータとの 比較が可能であるようにがん細胞の増殖 に伴 う腫瘍形成 過程 をも計算可能である。本論文で, 現在開発中のモデ ルの説明 と簡単なシミュレーション結果 について報告す る。

On the Mathematical Model with Morphological Change of Tumorigenesis in View