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はじのに 感音難聴は内耳の感覚受容器の一つである蝸 牛,聴 神経もしくはより中枢の聴覚路に障害があ る難聴である.わ が国では約600万 人,琶 界中で は約5億 人が感音難聴に罹患 し,重 度になると QOLの 低下につながるために見過ごす ことの出 来ない疾患であるがその有効な治療法は確立され ていない.感 音難聴の原因の多くはコルチ器に存 在する蝸牛感覚細胞(有 毛細胞)の 変性,消 失に よるものである.そ の原因として加齢 感染 音 響外傷,そ して内耳毒性薬物の使用があげられる. 哺乳類の失われた有毛細胞は自然に再生 しないた め,感 音難聴は不可逆性であり半永久的に続 く. 1980年 代後半 より鳥類の蝸牛の有毛細胞再生 の研究が進められてきた1).鳥類などの蝸牛有毛細 胞は障害後,自 然に再生することが解明している 峨 そこで哺乳類において一旦損失 した聴力を回 復させるためには,受 動的に感覚有毛細胞を再生 させることが必要となる.現在可能な方法として, 生体外から細胞を移植するか(幹 細胞移植術)3), 生体内の細胞増殖を促すか 峨 あるいは生体内に 存在する細胞を形質転換させるかの3点 があげら れる.3つ 目の方法は蝸牛内に残存する細胞,す なわち有毛細胞 を支える非感覚細胞である支持 細胞を分化変換することにより有毛細胞を再生さ せる方法である. Abasichelix-loop-helix転 写因子の一つである Atoh1(amousehomologueofthel)rosoPhilagene atonel)は 有 毛 細 胞 前 駆 遺 伝 子 と し て 作 用 し,多 能 性前 駆 細 胞 か ら有 毛 細 胞 へ 分化 させ る の に不 可 欠 な 遺 伝 子 で あ る6).こ のAtoh1遺 伝 子 を聴 力 正 常 の 哺 乳 類 の 蝸 牛 非 感 覚 細 胞 領 域 に過 剰 発 現 す る と コル チ 器 外(異 所性)に 新 し く有 毛 細 胞 が 発 生 す る こ とがinvitro7),invivo8)共 に 報 告 さ れ て い る.

Auditory Hair Cell Replacement and Hearing Improvement by Atohl Gene Therapy in Deaf Mammals