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線形破壊力学における微小き裂問題とは,金属やセラ ミックスの破壊靭性値(Kc)や疲労き裂進展の下限界応 力拡大係数範囲(ΔKth)がき裂寸法に依存し,短いき裂で は,その限界値がき裂長さの増大につれて増大するが,あ る長さ以上ではき裂長さに依存しない一定値となることで ある.このような現象が生じる原因は,線型破壊力学では, き裂先端部に発生する塑性域や非線型領域がき裂長さに比 べて十分小さいことを前提としているが,微小き裂ではそ の条件が満足されないためである. 前報で,筆者らは疲労き裂進展の下限界応力拡大係数 範囲(ΔKth)のき裂長さ依存性を,疲労特有の塑性挙動と 応力比(R)を組み込んだ式で報告した.ΔKthは,長いき 裂が対象でき裂長さに依存しない応力拡大係数範囲(Δ Kth(1) と,短いき裂が対象でき裂長さに依存する応力拡大 係数範囲(ΔKth(s) とに分けられる.この式は,後述の式(1) に示すように,一つの式で連続的に両者とき裂長さの関係 を求めることができるという特徴がある.この式をもとに して,微小き裂を有する窒化材及びばね鋼の疲労限度 のき裂長さ依存性を Rの違いに依らず高精度に評価でき ることが報告されている. 一方,ショットピーニングは,金属材料の疲労限度向上 技術として,広く利用されている.これまでの研究で, ショットピーニング材(以下,SP材と記す)では,疲労破 壊に関して次の1~4に述べるような興味深い現象を示す ことが明らかとなっているが,同時に以下で述べるような 未解決の課題が残されている. 1非ピーニング材(以後,Non-SP材)の疲労限度を 20% ~ 50%程度低下させるき裂材に,ピーニングを施工する ことにより,Fig. 1のごとく表面き裂を無害化できること が判明している.ここで,ピーニングによるき裂の無 害化とは,Fig. 1のごとく,SPき裂材の疲労限度を,SP を施工した平滑材の疲労限度の 95%以上に向上させるこ とと定義されている.これまでは,その無害化可能最 大き裂寸法(ahlm)を丹下等の式を用いて評価していたが , 後述の式(1)で,ahlmを正確に評価することができるか否 かを検討する必要がある . 2表面き裂を無害化できなかった試験片の疲労限度を, 疲労き裂伝播の下限界応力拡大係数範囲に着目した ショットピーニング材での特異な疲労破壊挙動の解析

Analysis of Peculiar Fatigue Fracture Behavior of Shot Peened Steels Focusing on Threshold Stress Intensity Factor Range