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ファンを用いた強制対流冷却は,電子機器の種類や実装 状況を問わず,素子からの放熱対策として最も広く用いら れている。単純に軸流ファンや遠心ファンを駆動し電子 機器筐体内に送風し冷却するものから,水冷システムや熱 輸送デバイス(ヒートパイプ,サーモサイフォンなど)の 低熱源側での熱拡散への適用まで,ファンで対応しなけれ ばならない熱設計事例は多様化しており,かつ重要度を増 している。冷却性能とコストパフォーマンスを両立すると いう観点からは,今後もファンを用いた空冷が数ある冷却 技術の中で重要な位置づけにあることは変わらないと予測 される。このような背景から,ファン空冷電子機器の熱設 計や,関連する冷却促進技術に関する研究は現在も継続し て広く行われている。 ファンの冷却性能は,主に図 1に示すような要因で決定 される。1ファンの送風量,2冷却部を流れる空気の状態 (乱れの生成,流れのはく離の発生,ファンの回転による旋 回の発生),3冷却促進にヒートシンクなどの伝熱促進体を 用いるのであれば,その性能である。したがって,ファン の冷却設計に関する研究は,主にこれらの要因に関する課 題の解決を目標に進められている。ファンが実装される電 子機器は千差万別であるため,それに伴い研究対象とする ファンの種類や寸法は幅広い。図 2に示すように,一般的 なパーソナルコンピュータやコピー機,プリンタなどのOA 機器,カーナビゲーションなどに搭載される標準的なファン の検証事例は多い。急激に進化を遂げているロボットも ファン空冷電子機器の一例であり,ヒートシンクと組み合 わせて熱源の放熱対策に使用されている例が報告されてい る 。一方,モバイル機器や部品の隙間など狭い場所に設 置することで伝熱促進を狙うために開発されたマイクロ ファンやピエゾファンの検証事例が増えてきた。近年のマ イクロ加工技術の進展によりこれらの超小型マイクロ送風 デバイスが出現してきており,電子機器の熱設計に応用で きるかどうかの可能性が検討されている。また,最近では サーバの高性能化に伴うデータセンタ内部の通風設計に関 する研究事例が多い。電子機器単体にとどまらず,室内全 体の実装機器の温度を制御したり,そのために室内の空調 を管理したりする観点からの検証事例も増えた 。これら は広義でのファン空冷に関する研究といえる。さらに,ワー ルドワイドで展開する開発競争に対応した QCD (Quality, Cost, Delivery)の改善のために,ファン空冷電子機器の熱設 計をより効率的に実施することが求められている。近年で は計算機の性能向上に伴い,電子機器の熱設計への CFD (Computational Fluid Dynamics,数値流体力学)解析の適用 が当たり前となった。そこで,CFD解析におけるファンの 取り扱い方に関する検証事例も多い。しかしながら実装部 品点数が多い電子機器を対象にCFD解析で熱設計を行う場 合,部品点数の増加や構造の複雑さなどが原因で,計算負 荷が増大してしまう傾向がある。特に部品点数が多い場 合,最適設計値を探索するためのパラメタ・サーベイも膨 大な回数が必要となるため,1回の解析時間をできる限り 低減したい要望がある。そこで,CFD解析の高い計算負荷 *岩手大学工学部機械システム工学科(〒 020-8551 岩手県盛岡市上田 4-3-5) *Department of Mechanical Engineering, Iwate University (4-3-5 Ueda, Morioka, Iwate 020-8551) ファン空冷電子機器の熱設計に関する最近の研究動向

Recent Studies on Thermal Design of Fan Cooled Electronic Equipment