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目 的 若年者の退職理由として,人間関係をあげる人が多い(厚生労 働省,2014)。そのため,職場の人間関係で発生する様々な対人 葛藤を克服できるかどうかが,ワークライフを大きく左右するといえ る。本研究では,対人葛藤時の解決方略の傾向と将来の職場で の対人関係に対する自己効力との関係性について検討した。 対人葛藤が発生した場合,対人関係に否定的な影響をもたらす。 しかし一方で,対処方法によっては肯定的な結果をもたらすことも 指摘されている。社会人を対象とした大西(2002)の調査では,職 場での対人葛藤に対する解決方略と対人葛藤の結果を検討して いる。その結果,当事者間でコミュニケーションを行い解決を図る 統合方略をとりやすい場合,対人葛藤の結果に対して満足しや すく,相手との関係性も良好であることが見出された。また,藤森 (1992)は対人葛藤の経験がもたらす肯定的な効果の一つとして, 「将来の対人葛藤を効果的に処理する調整能力の発達を促進す る」可能性をあげている。このように,対人葛藤がもたらす肯定的 な影響は,現在の人間関係への影響以外に,将来の人間関係に も影響するといえる。 本研究では,対人葛藤の解決方略と将来の対人関係との関係 性を明らかにする。具体的には,大学生を対象として,アルバイト 先での対人葛藤時に実行しやすい対処法略の傾向と,将来の職 場での対人関係に対する自己効力との関係を検討した。また,性 別やアルバイト期間によって,対処方略やその影響力が変化する 可能性が考えられるため,これらの要因の影響も検討した。 方 法 調査参加者 142名,平均年齢は 19.77歳(SD=1.28)であった。 測定項目 アルバイト経験 アルバイト経験の有無,職種と勤 続月数を尋ねた。複数ある場合は,勤続期間の長い順に最大で3 つまで回答を求めた。 対人葛藤の種類 アルバイト先での対 人葛藤経験の有無,対人葛藤の種類を尋ねた。 対人葛藤の解 決方略 大西(2002)の「職場での対人葛藤発生時における解決 方略」の 33項目を用いた。下位尺度として「統合方略」「消極的方 略」「第三者介入方略」「支配方略」が想定されていた。測定は,5 段階評定で行った。なお,大西は社会人を対象としていたが,本 研究では大学生を対象としたため,表現に若干の修正を加えた。 将来の職場での対人関係に対する自己効力 項目は,「上 司との間でトラブルが発生したときに上手に解決できる」,「部下と の間でトラブルが発生したときに上手に解決できる」,「同僚との間 でトラブルが発生したときに上手に解決できる」,「職場に馴染め ている」であった。測定は 5段階評定で行った。 結 果 対人葛藤の対処方略の因子分析結果 1か月以上のアルバイ ト経験と対人葛藤経験がある 86名を対象に因子分析を行っ た。結果,先行研究とおおむね同様の「統合方略」「消極的方略」 「第三者介入方略」「支配方略」の 4因子を抽出した。 将来の職場での対人関係に対する自己効力への解決方略の影 響 対人葛藤の対処方略の 4 因子,性別(男=0,女=1),アルバ イト期間(月数)と交互作用を説明変数,将来の職場での対人関 係に対する自己効力を被説明変数とする重回帰分析を行った (表 1)。その結果,説明率が有意だったものは,「上司との間でト ラブルが発生したときに上手に解決できる」,「職場に馴染めてい る」であった。この両方に対して,統合方略とアルバイト期間の交 互作用,性別と第三者介入方略の交互作用が共通して影響して いた。単純主効果を検討した結果,いずれの場合も,統合方略は, アルバイト期間が短い場合は正の影響をもたらすが,アルバイト期 間が長くなると影響がみられないこと,第三者介入方略は女性の 場合は負の影響をもたらすが,男性の場合はそのような影響がみ られないことが示された。

The relationship between the strategies in interpersonal conflicts and self efficacy for human relations in the workplace in the future.