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工学教育(J.of JSEE),66–2(2018) 1.緒言 東日本大震災では石油コンビナート施設が大きな被害 を受け,特に,大規模な津波によって油貯蔵施設から大量 の油が流出し,津波火災を拡大し気仙沼市街地の全焼に 至っている.このような自然災害起因の産業事故をNatech (Natural-hazard triggered technological accidents) と称し,自然災害と産業事故の間を繋ぐ新たな領域とし てその研究が着目されている.Natechに対し,社会や住 民の命・生活を守るためには何が必要であり,現実的に 可能なリスク対応の解析とリスクはどこまで受け入れる 必要があるのか,短期的・長期的な対応のあり方など, Natechに関する研究の課題は尽きない. 文科省の報告によれば,東日本大震災では,科学技術 コミュニティから行政や社会に対し,その専門知を結集 した科学的知見が適切に提供されなかったことや,行政 や専門家が社会に対して,これまで科学技術の限界や不 確実性を踏まえた的確な情報を発信できず,リスクに関 する社会との対話を進めてこなかったなどの課題がある と指摘されている.被害想定結果の公表やハザードマ ップの配布など,自治体でのリスク情報公開に向けての 取組が盛んになりつつあるが,市民レベルでのリスク認 知や災害のイメージを膨らませるには必ずしも十分では ない.リスクのより適切なマネジメントのために,社会 の各層が対話・共考・協働を通じて,多様な情報および 見方の共有を図るリスクコミュニケーションの活動がそ の一助となり得る.リスクコミュニケーションでは, ステークホルダーが広く互いの立場や見解を理解し合っ た上でリスクを認知し,主体的に関わっていく必要があ り,そのためにワークショップ手法を用いたリスクコミ ュニケーションについて検討がなされている. しかしながら,例えば「自治体」「企業」「住民」の異 なるステークホルダー間のリスクコミュニケーションを 進めるとなると,企業側の見解(規制や法規をクリアし ていることが安全活動の証し)や,行政の所管の壁,優 先する価値の違い,特には人間が本来有する「近視性」 や「楽観性」といったバイアスが短絡的な決断を促進 し,本来あるべき持続性を考慮した円滑なコミュニケー ションを妨げる境界として存在すると指摘されている. これらの境界を越境(boundary crossing)し,異質な 他者との交流で行われる共創的越境に繋げていくこと が求められる.

Validation of an Integrated Approach of Future Design and Scenario Planning-A Case Study of Disaster Prevention Workshop