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87 1.序論 缶サットとは,空き缶サイズの模擬人工衛星(satellite) のことである.観測機器を搭載した人工衛星は,地球な どを周回しながら,観測データなどを地球に送り,我々 の生活を支えている.しかし,人工衛星の打ち上げには 多額の費用がかかる.部品も高価でその素材なども慎重 に選ぶ必要があり,学生個人が気軽に製作するのは難し い.そこで宇宙開発などに関わる人材育成のために,地 上での動作を前提とした模擬人工衛星を製作し,衛星開 発の疑似体験をすることがよく行われる.学生が気軽に 缶サット製作を始めるためには,部品やプログラム,製 作手順などをセットにしたキットがあると便利である. 一方で,缶サットの観測実験には,モデルロケットや ハイブリッドロケット,係留気球等が用いられている. 気球係留には,高価なヘリウムガスが大量に必要なため, 少ない数の缶サット投下実験には向いていない.実際の 人工衛星と同じようにロケットによる打ち上げが理想的 であるが,通常の缶サットをある程度の高度に打ち上げ るためには,価格の高いロケットエンジンが必要だった り,火薬取り扱いのための手続きが必要だったりする. 缶サットの性能を保ちつつ,缶サットを小型軽量化する ことができれば,比較的安価で,取り扱いが危険でない モデルロケットでの打ち上げが可能となる. 2015年度の高専スペースキャンプでは,高等専門学校 生(高専生)を対象として宇宙人材育成のため,缶サッ ト講座および缶サット大会を開催した.講座で缶サッ トを製作し,翌日に投下実験を行った.使用したキット (以下,缶サットキット2015と呼称)は,500ml缶の中に マイコンボードとしてRaspberry Pi 2B,気圧センサや webカメラを搭載する単純な構造である. その後,より小型で安価なマイコンボード(Raspberry Pi Zero)の発売開始を受けて,缶サット製作未経験者向 けとして小型化した缶サットキットZeroを開発するこ とにした.図1に,缶サット用に準備した2種類の空き缶 を示す.今回使用した小 型の缶は内容量160gの 缶(φ53mm×91.6mm) で,コーヒー缶よりも 更に短い.大きめの缶 は,缶サットキット2015 でも使用しており,缶サ ット製作にはよく使われ る500ml缶(φ66mm× 166.7mm)である.小型 のマイコンボードを使用 することで,今までの缶 サットに比べて,かなり 小型軽量化されることが 期待される. 2017 年2月 21 日受付 ※1 高知工業高等専門学校 宇宙技術教育のための小型軽量 缶サットキットZero の開発と成果

Development and Results of Compact and Lightweight CanSat Kit “Zero” for Space Technology Education