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工学教育(J.of JSEE), 61–1(2013) 1.はじめに 高等専門学校の昨今の評判は,50年前の創設当時は 誰も予想してなかったのではないか.50年という節目 を技術者教育界で注目を集めつつ迎えたことを心から 祝福したい. 筆者は,東大工学部で約30年に亘り工学教育研究に 係わってきたが,約4年前からは海陽中等教育学校の 校長を務めている.この学校は完全な全寮制(通学生 はいない)の中高一貫男子校で,約7年前に英国のイ ートン校などを参考にして産業界のリーダー達によっ て設立された.建学の理念は次代のリーダーを育成す ることであって,そのために基礎学力と人間力をバラ ンスよく育む全人教育を重視している.本特集号の編 集委員会からは,このような教育の経験を踏まえて高 専教育の在り方を述べるよう薦められた. 筆者が今係わっている中等教育を高専教育と比べる と,重なるのは高校教育の3年間だけである.中等教 育ではこの共通部分の他に中学の3年間があり,高専 教育では大学1,2年やこれ以降の教育がある.したが って,重ならない部分に限れば両者は比べようがない くらい別物である.それでも,教育における力点に着 目すると,何かしら共通するところがあるように思わ れて,寄稿をお引き受けした次第である. 筆者は90年代後半からしばらくの間,大学評価・学 位授与機構による高専の認証評価に係わってきた.そ の頃務めていた大学ではJABEEへの対応も含めて技 術者教育の取り組みが大きな関心事であった.これは 大学が主体的に行動したというよりも,国際的に産業 競争力を高めることが急務となった産業界からの大学 に対する要請,あるいは率直に言えば苦言が契機とな っていたと思う. その当時,高専と大学を技術者教育の観点から比較 すると,高専は大学に比べて公正にみてよい教育成果 を挙げていたと思う.卒業生に対する産業界の評判が 良かった.地域連携にも良く取り組んでいた.それゆ え私は高専は大学と似て非なる存在であるという印象 を持った.両者の違いは何に由来するのか,おそらく カリキュラムだけでは説明しきれないものがあると思 っていたが,現在の学校に関わるようになってからそ の違いの由来が少し分ってきた. 以下では,まず,技術者教育と社会の関係の推移を 整理した上で,高専のさらなる発展を祈念しつつ,寮 生活,ガバナンス,職業観などの観点から高専の大学 とは似て非なる特色に触れてみたいと思う.

Expectation for Technical College from Author^|^rsquo; s Experiences Both at the Secondary Education and the University Education