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146 工学教育(J.of JSEE), 60–4(2012) 熊本県立技術短期大学校は,高校卒業者を対象とし た2年間の専門課程により,科学的・技術的な知識を マスターするとともに,実験・実習による「ものづく り」を重視した「実学融合」の教育訓練を行い,新し い時代を生きる「実践技術者」を育成することを目的 に平成9年に開校した.開校して早13年が経過したが, 開校当時,教員は皆,講義,実験・実習,授業計画や 講義の資料作成を試行錯誤しながら無我夢中で取り組 んだ.開校から現在までの13年間の教育で感じたこと として、 (1)日本のものづくりのあり方,(2)学生の学力 と学習意欲,(3)教員の熱意,の3つに課題があると考 える. (1)日本のものづくりのあり方.理工系の大学への入 学を希望する学生は減少しているといわれて久しい. 原因の一つとして製造業はきつい,汚い,危険といった 3K職種であることが挙げられていた.近年は大学に おいても「ものづくり教育」が重要といわれるが,学 生の理工系離れは少し変化しているように感じる.そ れは,日本の製造業の海外移転と外国製品の台頭に起 因する.ものづくりを行う製造現場は中国に移転しつ つあり,日本を支えてきた自動車でさえも海外からの 部品調達の比率が高くなっている.熊本県の自動車や 二輪部品メーカー協力会社もメーカーからの仕事の減 少,メーカーの海外進出に悩まされている.身の回り の製品はほとんど中国製であり,技術協力や工場の国 外進出によって多くの技術者を国外に流失している. このような中,少子化で大切に育てられた子供を海外 に赴任させる可能性が高い製造業に就職させたいと思 う親は多くない.海外の大きな市場を狙った工場建設 や国外企業への技術支援は大事であるが,国内のもの づくりをどのようにしていくかは国の政策として早急 に検討すべきである. (2)学生の学力と学習意欲.これまで,日本でものづ くりは高精度高品位であり,海外ではまねのできない 製品づくりを行っているといわれてきた.しかし,前 述したように,技術協力や高度熟練技能者等を国外企 業が雇用することで,その差はかなり接近している. これに対抗するためには,資源の無い日本においては やはり優秀な人材を育てることに尽きる.知力,技術 力で勝負しなければならない. では,我々が育てている学生は現在どのような状況 にあるのか.大学入学時の学力低下が指摘されている が,中学校や高校での教育内容がゆとり教育で不足し ていることが原因といわれている.本校でも学生の入 学時の学力低下は強く感じられる.そして,高校生の ほとんどが大学に進学できる時代であり,ここ数年の 就職難で更に進学率が高まっていることから,今後も 入学者の学力は低下することが予測されている.本校 では,数学の基礎学力低下が問題となっており,工学 教育に必要な数学の知識不足から専門科目の授業が十 分に行えない状況にある.そこで,本校では推薦入学 内定者に対して入学前から高校数学の復習を促してお り,入学後も専門科目に必要な数学の授業を行ってい る. ところで,私が数学の学力低下以上に気になってい ることは,学生の学習意欲の低下である.授業アンケ ートの結果からも学習意欲が少ない学生が多いことが わかる.特に専門科目で授業内容が難しく理解できて いないとの結果が目につく.しかし,そのように答え る学生が授業後に質問してくることはほとんどなく, 家庭学習をしている様子も伺えない. (3)教員の熱意.以上のように,学力も学習意欲も低 下している学生であるが,やはり愛情を持った指導を 行う意外,方法は無いように感じている.教員は自信 を持って授業することが大切であり,そのためには, 豊富な知識と経験および技術力が必要である.また, その知識と技術を伝えるための話し方や板書の方法等 の授業テクニックも重要であると考える. 本校は実践技術者を育成する場であり,製造業に就 職することを目的とした短期大学校である.本校に入 学したということは,少なからずものづくりに興味を 持った学生である.今後の日本のものづくりを担って いく人材を育てるため,我々教員が苦労を惜しまず, しっかりと指導していくことが何より大切であると感 じている. 熊本県立技術短大開校 14 年目の工学教育に対する所感

Impressions of Engineering Education in the 14th Year with Kumamoto Prefectural College of Technology