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光学薄膜フィルタにおいて,一般には面内での膜厚均一性 や膜質の均質性は高いことが望ましい。光学薄膜における膜 厚は,基本的には使用する波長に対応する。つまり膜厚が厚 くなる場合は長波長側に分光特性がシフトし,膜厚が薄くな る場合は短波長側に分光特性がシフトする。それでは成膜エ リア内で膜厚の不均一が起こる場合はどのような不具合を起 こすのであろうか。膜厚の不均一は成膜エリア内で,分光特 性の波長不均一を生じることになる。さらに,膜材料ごとに 膜厚不均一の分布が異なる場合は,面内に異なる光学特性を 持つ箇所(分光特性が崩れた箇所)が形成されることになる。 これらは光学部品の品質と生産性の両方に影響を与える。比 較的大きな部品においては,面内全体の特性の均一性が製品 仕様として求められることが多い。つまり面内の均一性が品 質そのものとして求められる,ということである。小さな部 品においては,1個の部品の面内での膜厚を比較的容易に均 一にすることができる。しかし 1回の成膜でいくつ生産でき るか,という点で考えると,成膜エリアの膜厚均一性が低い 場合,均一性が悪い成膜エリアには基板を設置することがで きないため生産性は低下する。このように膜厚均一性につい ては品質・生産性両面において重要であるため,均一性の向 上を目的としてこれまで様々な工夫がなされてきた。基本的 な改善策としては,1蒸着源・スパッタ源から基板に到達す る成膜粒子の均一化,2装置内での基板運動による平均化, という手法がとられてきた。1については,膜粒子が放出さ れる蒸着源やスパッタ源から制御可能な方向性で放出させ, できるだけ均一な分布で膜粒子を基板位置に到達させる工夫 である。2については,1で均一化された分布をさらに平均 化することを目的として基板を成膜エリア内(外)で運動させ る工夫である。どちらか一方の改善だけでなく,両方を組み 合わせて膜厚の均一性向上は図られてきた。 膜厚の均一性は生産性に大きく関わる部分なので注目され ることが多いが,膜粒子の入射角も品質にかかわる要素とし て重要であることを忘れてはならない。膜粒子の入射角は主 にシャドーイングによる膜厚不均一と膜質に影響を及ぼす。 シャドーイング(遮蔽)は基板と蒸着源・スパッタ源との間に 立体物が存在する場合に,そこに影ができる現象である。立 体物の影にあたる部分では到達する膜粒子が減少するため, 結果的に膜厚が薄くなる。この現象はレンズなどの立体形状 物に成膜するときに,蒸着源・スパッタ源から遠い位置の面 などにおいて現れやすい。また,基板を設置するコート枠近 傍の膜の滲みとしても現れる。蒸着は蒸着源と基板との距離 が比較的大きいため,基板に対して垂直方向の膜粒子が多く, コート枠近傍の滲みが生じにくい。それに対してスパッタリ ング成膜の場合は,スパッタ源と基板との距離が短いため, 様々な角度から膜粒子が基板に到達する。コート枠から遠い 位置(基板中心の場合が多い)ではそれらの粒子がどの角度か らも到達できるが,コート枠近傍ではある方向の膜粒子が シャドーイングにより遮蔽されるため,比較的大きな滲みが コート枠近傍に形成される。シャドーイングは膜粒子の入射 角分布の乱れにより引き起こされる膜厚不均一であるが,膜 粒子の斜入射は膜成長に対しても影響を及ぼす。基本的には 膜粒子の入射方向に膜は成長する傾向が強いので,膜構造は 入射角分布に影響を受けたものになり,膜質もそれに従って 変わってしまう。 このように光学薄膜成膜において膜厚の均一性と膜粒子の 入射角分布は重要である。これらを改善する一般的な手法に ついて紹介するとともに,揺動自転運動による均一化につい ての実験結果を報告する。

Improvement of Uniformities of Thickness and Incident Angles of Particles by Oscillating Rotation Motion on Reactive Sputtering Deposition