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成膜技術(薄膜/厚膜)は,基材表層に形成させた皮膜に よって基材に不足する特性を補完することができることから 材料技術の一翼を担っている。幅広い用途に活用されている 成膜技術であるが,皮膜に要求される性能・機能の高度化に よって成膜プロセスの改良や新規成膜法の開発への期待が高 まっている。特に従来の薄膜領域を超えた膜厚にすることで, 長寿命化・耐久性の向上,使用環境と用途の拡大(例えば, パワー半導体や静電チャックの絶縁層では膜厚を増加させる ことにより絶縁耐電圧を高める,磁性膜の厚膜化による高い 磁界発生など),新しい材料設計による電磁デバイスや一部 のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの実現が検 討されてきていることから厚膜の形成が可能な成膜法の提案 が高い関心を集めている。しかし,皮膜の厚膜化は,薄膜と 比較して(1)き裂,ボイド,ポアなどの膜中欠陥の存在によ る膜質・性能の低下,(2)基材からの剥離・低い密着性,(3) 膜組織および界面構造の制御性の問題が顕在化すると指摘さ れている。 これまで各種めっき技術による厚膜形成は多く検討されて きており実用化事例も多いが,ドライプロセスやセミドライ プロセスにおいても,近年,上記厚膜の技術的課題を克服す る成膜法として,HiPIMS(High-Power Impulse Magnetron Sputtering),Cold spray ,サスペンションプラズマ溶 射(SPS),Aerosol deposition(AD)/ハイブリッド AD 9) や,まだ厚膜の成膜実績は少ないが原理的に厚膜形成が可能 な有機金属熱分解法 ,分子プレカーサー法 などの各 種手法が開発され注目されている。 著者らのグループでは,基材との高い密着性とバルク同等 あるいはバルク以上の優れた特性の獲得の両立を目指し,室 温近傍の低温環境下で膜厚数μm以上の緻密なナノ結晶厚膜 の形成を実現する新規成膜法として超音速フリージェット PVDを提案開発している。本法は,不活性ガス雰囲気中で 皮膜となる原料を加熱蒸発させることにより生成される nm サイズの粒子(ナノ粒子)を超音速のガス流により加速,基板 上にナノ粒子を堆積させることにより皮膜形成させる新しい 原理による成膜法である。本法では,蒸発させた原子を捕集 しナノ粒子として基材に堆積・成膜させるため,膜原料を高 い歩留まりで皮膜とすることが可能である。また,本法によ る皮膜はナノ結晶粒を呈することも特徴の一つである。これ まで本法を用い,各種金属膜,金属間化合物膜,セラミック ス(酸化物,窒化物,炭化物,フッ化物)膜,ナノコンポジッ ト膜の成膜に成功している。本稿では,本法の原理とこれま での成膜事例について紹介する。

Nanocrystalline Thick Coating Films Deposited by Supersonic Free-Jet PVD