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2012年 10月 6日に行われた津波堆積物ワークショップ の講義と討論に引き続き,翌 7日から 8日の 2日間,過去 の古津波堆積物の調査地をめぐる巡検が行われた. 志摩半島を出発点として,橋杭岩で知られる串本町まで 南下しながら,沿岸域での津波痕跡調査について有望な調 査地はいかなる場所か,ということにつき多く議論が交わ された. 堆積物から地震履歴を復元しようとする研究者にとっ て,その科学的根拠となる津波堆積物を認定することは, それをもたらした地震の存在を認めることである.津波痕 跡調査法が,波源域解明に役立つツールである一方,その 認定については学術的のみならず,社会的観点から 1層の 津波痕跡を認定するという行為の責任は大きい.先の内閣 府南海トラフ巨大地震モデル検討会では,津波痕跡は一部 科学的根拠として扱われ,津波断層モデルのすべり域の設 定が検討されている(内閣府南海トラフ巨大地震モデル検 討会,2012).また,近日各機関や自治体等で減災を目的と した独自の津波堆積物調査が始められており,それらの業 務に携わる方々の中で調査地選定に苦慮されているという 話も聞く.限られた期間と予算の中で,いかに効率よく津 波痕跡を発見するかということは,各方面の調査で切実で 大きな課題である. この巡検は,津波堆積物マイスターを目指し地震履歴復 元を試みる自分にとって,その津波痕跡と地形条件につい て深く考察することができたと同時に,10年ぶりのマイ フィールドを巡る懐かしく意義深い旅となった. 巡検の際,現地では,研究報告で使用されたコア観察も 行われ,風景・地形・堆積物を材料にして総合的に考察で きた事は,この巡検の魅力だった(写真 1,写真 2,写真 3). ここで,私が本巡検で感じた地形と津波堆積物の残り方 について,巡検報告と併せて考察する.

A field report of the Tsunami sediment workshop(Kii Peninsula, Honshu district, Japan, October 2012)