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心身一如という認識は漢方医学のパラダイムを特 徴付けるものであるが,その科学的な背景を正面か らとりあげ,これを論じた論文はこれまでに公表さ れていない。そこで心身一如について瘀血病態を具 体例として採り上げ,特に関連が深い怒りの情動に 絞って検討することにした。 瘀血病態が血液粘度の上昇あるいは赤血球集合に よる微小循環の障害であることを筆者は共同研究者 と共に明らかにしてきたところであるが,これの みでは瘀血病態に関連の深い易怒性,攻撃性,イラ イラ感という情動の変調は説明できなかった。そこ で瘀血病態の診断に関連する臍傍の圧痛あるいは 胸脇苦満の発現メカニズムさらには凍瘡の発現機 序としての自然炎症を基盤に心身一如のメカニズ ムを解き明かすことを企図した。しかし,骨盤腔内 臓器の侵害刺激情報を伝達する脊髄からの上位中枢 への投射と,情動に関わる大脳辺縁系における情報 処理は極めて複雑であり,その解明は現在進行中の 事柄であるので,本論文ではこれまでの数多くの科 学的研究成果の中から考察に適した論文を参照し, 現時点で最も合理的に骨盤腔内の異常と情動(特に 怒り)との関連を統一的に説明する論理展開を試み たものである。 文献の調査 1.瘀血病態が心身一如であることの記述につい て 『傷寒論』の抵当湯の条文に「其人如狂」の記述 があり,瘀血に伴う情動の異変が記されているが, このことを更に明確に記した文献は矢数道明の『漢 瘀血病態における心身一如に関する一考察

<b>On the Mind-Body Unity in the </b><i><b>Oketsu </b></i><b>Syndrome</b>