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東京帝国大学医学部教授であった橋田邦彦 (1882‐1945)は,自身の生理学研究に専心するか たわら,道元の『正法眼蔵』研究や「全機性」とい う概念を軸とする独自の科学論の展開に注力した人 物として知られるが,その主著とされる『碧譚集』 (1934年)や『空月集』(1936年),『行としての科 学』(1937年)などの発表により,日本主義的科学 論の代表的論客として一世を風靡した。だが,今や その名を知るものは数少ない。 まずは,彼の生涯について簡単にふれておくこと にしたい。橋田邦彦は1882年3月15日,鳥取県倉 吉に藤田謙造の二男として生まれ,1899年に同郷で 医業をいとなむ橋田浦蔵の跡継ぎとして養子に入っ た。その後上京し,第一高等学校三部を経て東京帝 国大学医科大学へ入学,1908年の卒業後は臨床医に なるはずであったが,生理学研究の道を志し,1921 年に『蛙皮電動性に関する研究』で医学博士号を取 得,翌年には生理学第二講座の教授に就任した。第 一次世界大戦や関東大震災といった数々の困難を乗 り越え,「『日本の生理学』を確立する捨石」となる といった気概を示しながら自身の生理学研究を深化 させる一方で,「『生きて居る』ということは何か」 という問いに応答すべく道元の『正法眼蔵』研究に 「医人」・「医行」・「格医」

<b>Kunihiko Hashidaʼs Theory of “I-JIN”, “I-GYO” and “KAKU-I”</b>