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人口構成の高齢化に伴い,老 人患者の増加は著 し く,そ れに伴いねたきりあるいはその状態に近い患 者が多い。かかる患者は消化機能の衰え,蠕 動の減 弱,運 動の不足,繊 維性食品や水分の摂取が少ない などの悪条件が重なり,便 秘に陥 りやすくまたイレ ウスをひき起こすことも稀ではない。西洋医学的に イレウスの分類として,急 性 ・亜急性 ・慢性に分類 し,あ るいは単純性 ・絞扼性 ・麻痺性に分 類 され る。急性絞扼性の場合は,軸 捻転,ヘ ルニアや腸重 積によるものが多 く,慢 性 ・亜急性 ・単純性 ・麻痺 性の場合は癌による閉塞,糞 による閉塞,憩 室症, 硬皮症,肉 芽腫性大腸炎によるものが多い。また器 質的 ・機能的およびその混合型に分ける場 合 もあ る。 癌やヘルニアによるものあるいはS字 状結腸部の 軸捻転症,腸 間膜の血管閉塞性イレウスなどは直ち に年齢を問わず外科手術の対象とすべきであ り,こ れらは保存的治療の範囲外であるが,そ れ以外の単 純性や麻痺性イレウスなど老人患者にしば しばみら れるイレウスまたはイレウス前状態は充分漢方薬の 内服,注 腸など内科的治療にても治癒可能である。 複雑な基礎疾患をもつ老人の場合は手術による侵襲 が大きく,手 術は避け られれば回避すべきである。 ねたきりに近い高齢者はイレウスを合併 しても腹痛 など自覚症状も若年者ほど顕著でなく,ま た毎日少 量ずつ排便があっても残便が糞塊 として徐々に蓄積 し閉塞の原因となることも多い。 したがって常々便 通に留意し,腹 診を頻回に行ない,軽 度の自覚症状 (腹痛,嘔 気,嘔 吐)に ても入念に診察 し必要あれ ばレ線による腹部単純撮影等検査を実施 しイレウス を早期に確認し迅速に処置を行なう必要がある。特 に便秘傾向の老人患者に対 して潤腸湯,麻 子仁丸, 大黄甘草湯,瀉 心湯類,桂 枝加芍薬大黄湯,大 建中 湯,小 建申湯などの漢方方剤を証に従って常用せ し めて,イ レウスの発生や,再 発を防止できると共に, 一方では,虚 弱体質の改善や食欲の増加など,単 な る下剤にみられない側面効果が相加され,副 作用な く快適な毎日を過せしむることが可能である。食養 による便秘の防止の必要性は勿論である。 以下当院で経験 したイレウスの治験例数例を述べ る。

Our Experiences in Treatment for Ileus of Senile Patient with KAMPO Therapy