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異所性胃粘膜より発生した十二指腸癌は極めて稀な 疾患である.今回われわれは上部消化管内視鏡検査で 発見された十二指腸球部早期癌に対し幽門側胃切除術 を施行し,術後病理組織診断で異所性胃粘膜から発生 したと考えられた1切除例を経験したので若干の文献 的考察を加えこれを報告する. 症 例 患者:73歳,男性. 主訴:特記すべきことなし. 既往歴・家族歴:高血圧,狭心症,腹部大動脈瘤に 対し人工血管置換術 現病歴:近医にて健康診断目的で施行した上部消化 管内視鏡検査で十二指腸球部に1cm大の隆起性病変 を指摘された.生検で腺癌が認められ,十二指腸早期 癌の診断で当科に紹介受診した. 入院時現症:身長167cm,体重52kg.腹部平坦・軟. 入院時血液生化学所見:特に異常を認めなかった. CEA5.0ng/dl CA19-921Ug/dl 上部消化管内視鏡検査:幽門輪近傍の十二指腸球部 小彎前壁に発赤調,表面平滑,立ち上がりの急峻な1 cm大の隆起性病変を認めた(図 1左).生検で高分化 型腺癌と診断された.十二指腸早期癌と診断したが, 視野の確保が困難であり,内視鏡的切除は不能と判断 した. 上部消化管造影検査:十二指腸球部小彎前壁に再現 性のある1cm大のバリウムのはじき像を認めた(図 1右). 腹部造影 CT:明らかな病変を指摘しえなかった. 手術所見:肝臓,腹膜,リンパ節に転移を疑わせる 所見は認められなかった.十二指腸球部に腫瘤を触知 しなかった.手術は幽門側胃切除,D1+α郭清, Bilroth1法再建術を施行した.術中迅速病理診断により 十二指腸断端に腫瘍の遺残を認めないことを確認した. 摘出標本:幽門輪に接して十二指腸球部小彎前壁 に,1×0.7cm大の発赤調,表面平滑,立ち上がりの 急峻な隆起性病変を認めた(図 2). 病理組織学的検査:病理組織学的には,隆起性病変 の大部分は胃底腺を有する異所性胃粘膜の所見を示 し,その一部に粘膜内にとどまる,高分化型腺癌が認 められ,腺癌組織の大きさは2×2mm大であった(図 3,4).異所性胃粘膜内に腺癌組織を認めたため,異 所性胃粘膜より発生した十二指腸早期癌と考えられ た.断端に腫瘍は認められなかった.リンパ節転移は 認められなかった.胃癌取扱い規約に準じると,tub1, INFα,M,ly0,v0,PM(-),DM(-),stage1Aで あった. 術後経過は良好で,術後第18病日に退院した.

A case of early cancer of the duodenal bulb suspected to have arisen from ectopic gastric mucosa