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症例:85歳,女性。 主訴:食欲不振,意識障害。 既往歴:右大腿骨頚部骨折(82歳時)。 家族歴:特記すべき事項なし。 現病歴:自宅で介護を受けていたが,徐々に受け答 えがはっきりしない状態となり,当院へ救急搬入と なった。脱水による意識障害が疑われ,一般病棟に入 院となった。意識障害は輸液などで改善したが,第5 病日に呼吸状態が急激に悪化し,ICUに入室した。 ICU入室時現症:Glasgow coma scale 8点(E2 V2 M4),血圧74/45 mmHg,心拍数105 /min,呼吸数 36 /min,体温37.2°Cであった。四肢末梢にチアノー ゼが著明であった。 ICU入室時検査所見:血算,血液生化学検査では WBC 3,000 /μlと軽度低下,総蛋白4.5 g/dl,アルブ ミン2.4 g/dlと低下,尿素窒素21.5 mg/dlと軽度上昇 などの異常値を認めた。胸部CTでは両肺に著明な浸 潤影,胸水貯留を認め,ARDSと診断した。 ICU入室後経過(Fig. 1):著明なガス交換能悪化 (酸素10 l/min投与下,PaO2 43 mmHg,PaCO2 75 mmHg)を認め,直ちに気管挿管,人工呼吸を開始し た。中心静脈カテーテルを留置し,大量輸液,カテコ ラミン投与(最大投与量はノルアドレナリン0.3μg/ kg/min,ドブタミン15μg/kg/min)を開始したが,十 分に循環動態が安定せず,ヒドロコルチゾン持続投与 (bolus 100 mg投与,その後200 mg/day)を行った。 誤嚥性肺炎,尿路感染症,およびそれに伴うARDSを 疑い,バンコマイシン1.0 g/day,タゾバクタム/ピペ ラシリン9 g/dayを投与した。呼吸状態は改善し, ICU入室後7日目に人工呼吸器を離脱,抜管した。 抜管後も高熱が継続し,抜管前に提出していたβ-Dグ ル カ ン が125.5 pg/mlま で 上 昇 し て い た た め, empiric therapyとしてミカファンギン150 mg/day を開始した。しかし,ガス交換能再悪化を認め,入室 後13日目に再挿管,人工呼吸を再開した。再挿管時に 提出した血液培養2セットから,Trichosporon asahii (T. asahii)が検出され(喀痰,尿からは検出されず), 感受性試験結果に従い,ボリコナゾール200 mg/day (初日は300 mg)で開始した。ボリコナゾール開始後 8日目には解熱し,ガス交換能も改善傾向となった。 入室後18日目に気管切開を行った後,26日目に人工 呼吸器を離脱し,33日目にICU退室となった。 敗血症を原因とする急性呼吸窮迫症候群に合併したトリコス ポロン血症の1例

Trichosporon fungemia in a patient with acute respiratory distress syndrome due to sepsis