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熱化学水素製造法は,複数の化学反応を組み合わせる ことによって,直接熱分解に要求される数千度という高 温より低い温度レベルの熱エネルギーを用いて,水を分 解しようとするものである.本水素製造法は,水分解に 要する一次エネルギーに原子力エネルギーや自然エネル ギーを利用でき,環境保全性,経済性が高く,しかも, 大量の水素製造に適した技術の候補として,近年,注目 を集めるようになってきた. 熱化学水素製造法 IS プロセスは,SI プロセスとも呼 ばれ,1970年代に General Atomic社が提案1)した硫黄系 熱化学サイクルの一種である.本プロセスはヨウ素と硫 黄の化合物を循環物質として用いており,高温 吸熱反応 と低温発熱反応を含んだ以下に示す三つの化学反応 (1, 2, 3)で構成される. SO2(g)+I2(aq)+2H2O(aq) → 2HI(aq)+H2SO4(aq), ca. 100°C (1) H2SO4(g) → H2O(g)+SO2(g)+0.5O2(g), ca. 850°C (2) 2HI(g)→ H2(g)+I2(g), ca. 500°C (3) このように,ISプロセスは,極めて腐食性の強いプロ セス流体 (気相や液相の硫酸およびハロゲン) を広い温 度範囲で取り扱う.このため,本プロセスの実用化には プロセス環境に対する耐食性などの適用性を検討した装 置構造材の選定が課題となる.これまでに種々の市販材 料について代表的なプロセス環境を考慮した耐食材料評 価やスクリーニング試験が実施されてきた2)-16). 本研究は,ヨウ化水素分解反応環境 (式 3) に関し,ヨ ウ化水素 (HI),ヨウ素 (I2),水 (H2O),および水素 (H2) の混合ガス環境に適した装置用金属材料を選択する ことを目的とする.ヨウ化水素分解反応は 400~500°Cで 進行する固体触媒を用いた気固接触反応である.触媒層 に HI-I2-H2Oガスを導入して,HIを熱分解し触媒層後で 水素を含む H2-HI-I2-H2O ガスを得る (平衡分解率は約 20%).本反応工程では,腐食性環境物質である HI-I2H2Oガスが高温 (400~500°C) で存在し,かつ,これに 水素が同伴する. 多くの無機系材料 (ムライト,コランダム,ペリクレー ス,ジルコニア,黒鉛,石英,窒化ケイ素,炭化ケイ 素) はこの環境に対して耐食性を有する4), 14).一方,実 用化を目指し,ISプロセスに用いる化学装置の大型化を 進めていくためには,金属材料の適用が望ましい.一般 に金属はハロゲンガスに耐用しない.これは,高温で生 じるハロゲン化物が揮発性となり,あるいは融点,分解 点が低く,保護皮膜が形成される傾向が失われるため17) 材料と環境, 62, 122-128(2013)

Adaptability of Metallic Structural Materials to Gaseous HI Decomposition Environment in Thermochemical Water-splitting Iodine-sulfur Process