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視覚の特性や機能を理解し,それらを模擬して映像情報 伝達技術へ応用することで,比較的簡便に,映像の画質改 善において効果があることが示されている1)2). われわれの研究グループは,これまでに視覚における モーションシャープニング現象を模擬した動画像鮮鋭化手 法を開発した3).モーションシャープニングとは,注目し ている対象が静止した状態を観察するより,移動している 状態を連続的に観察した方が対象物体を鮮明に知覚するこ とがあるという現象をさす.この現象を説明する視覚の時 間応答特性モデルを基に,それを簡略化した動画像処理ア ルゴリズムとして実現した3).この動画像処理手法によっ て,動画においては視覚特性によって鮮鋭化されて観察さ れていた対象が,静止画においても不明瞭になることを防 ぎ,モーションシャープニングを再現することが可能に なった.また,内視鏡画像を対象に,カラー画像処理化手 法の提案ならびにその効果について検討し,粘膜の毛細血 管構造の鮮鋭化に成功した4).さらに,視覚の時間応答特 性における抑制性と興奮性の応答の時間差を導入すること で,より大きなコントラスト向上効果およびS/N比改善効 果が得られることを示した5).なお,われわれの開発した 動画像鮮鋭化手法3)~5)では,動画像において動きのある対 象の鮮鋭感が向上するという特徴があるため,移動物体が 強調される.そのため,本研究では,このような鮮鋭化手 法やその効果について表現する際,強調処理や画像強調と 表記する. 急速に移動する物体の場合,フレーム間の移動距離が大 きくなり,そのため,われわれが開発したこれらの手法で は強調処理によって擬似輪郭が出現するという欠点が報告 されている3).時間応答特性モデルにおける興奮性応答と 抑制性応答の時間差を導入した場合,より大きな鮮鋭化効 果が得られる分,この擬似的な像もより強調された. 本稿では,従来法の欠点であった強調画像に生じる擬似 輪郭を低減し,画質を改善する手法を提案する.その際, 強調処理を効率的に行うために,計算コストをより低減し た手法として提案する.

Image Quality Improvement of Image Enhancement Method using a Time Response Model of Human Vision