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2.1 IPによる映像伝送 有線系・無線系IPネットワークの広帯域化,サービスエ リアの拡大に伴い,近年,IPネットワークを利用した映像 伝送が盛んに行われている.IPによる映像伝送には,主に 生中継などで用いられるリアルタイム伝送(ストリーム伝 送)と,素材伝送などで用いられる蓄積伝送(ファイル伝送) とがある. リアルタイム伝送は遅延の少ない伝送が可能であるが, 一方でネットワークの帯域変動にともない画質の劣化や映 像の破綻が発生するため,帯域保証のないネットワークを 利用する場合,高品質・高信頼な伝送が難しいという特徴 がある.また,山間部など広帯域なIP網が整備されていな い局所からの映像は,IP網のスループットの制限により ビットレートを下げざるを得ず,低画質の映像伝送を余儀 なくされる. リアルタイム伝送装置の例としては,文献1)2)に示され るようなIPコーデックが多く実用に供されており,近年で は4K映像に対応した装置も開発が進んでいる.またネッ トワークの輻輳時にも映像の破綻をできるだけ抑えられる ように,帯域の変動に応じて映像のビットレートを動的に 変化させるIPコーデックも実用化されている. 一方,蓄積伝送は,送信側で一旦蓄積した映像を,ネッ トワークの利用可能な帯域内で,伝送に必要な時間をかけ て伝送する.リアルタイム伝送よりも大きな遅延が生じる ため,現場との会話(掛け合い)を伴う生中継など,リアル タイム性が要求される伝送には不向きであるが,ネット ワークの帯域や輻輳の状態によらず,常に高画質の映像を 安定して伝送可能である.蓄積伝送の例としては,公衆無 線LANの利用を想定し,1分以内の遅延を目指した伝送装 置が開発されている. 2.2 災害映像のIP伝送 多くの放送局では,地震・津波などの自然災害や突発的 な事件・事故の発生に備えて,重要局所にロボットカメラ あらまし 災害発生時のロボットカメラの映像や日常のニュース素材映像を取得する,新しいIP映像伝送システム を開発した.本システムはIP網の帯域や輻輳の状況によらず高画質な映像を伝送可能であり,安価なベストエフォー ト回線を利用して幅広い活用が可能である.本システムは地震発生時の映像を自動で取得する機能を備え,運用者の 手間をかけずに迅速な放送利用を可能としている.また映像ファイルを秒単位で分割し,複数のTCPコネクション で並列伝送することで,ネットワーク帯域の有効利用を実現するとともに,映像の重要度に応じてスループットを配 分する優先伝送の仕組みも備えており,大規模な地震により複数の地点から同時に映像が送られる状況下でも,より 重要な映像をいち早く取得可能である.

Development of Remote Storage IP Transmission System for Video Signals of Disasters, Accidents and News Materials