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肌の「透明感」は,今日の化粧業界における商品開発にお いて重要なキーワードである.元来,肌の透明感という言 葉は肌の質感を表現する際に常用されているが,実際は個 人の主観や経験に左右される指標であり,非常にあいまい な表現であることが問題となっている.また,肌の透明感 を決定する視覚的要因も解明されておらず,客観的な定義 も不明確である.そのため,肌の透明感という質感表現を 客観的に評価する技術が現在求められている.言語的な 意味合いで言えば,征矢らによる,女性の「透明感のある 肌」に対する意識についての言語的概念からの分析を試み た調査から,「透明感のある肌」と高い相関関係にあるのは 「にごりない肌」,「きめの整った肌」という表現であること が報告されている.この調査におけるクラスター分析の 結果から,若年層では「色・形態の均一,にきび」,「うる おい」,「きめ,生まれたての肌」の複合表現である一方, 中高年層では「きめ,うるおい」,「色,形態の均一」,「乾 燥,にきび」の複合表現であるとの見方もある.これらの 結果から,肌の透明感の認知特性には年齢差があることが 示唆される.また,肌の透明感は日本では常用されている 概念であるが,中国や一部の東南アジアを除くと,世界的 には概念自体,未だ存在しない地域も存在する. ヒトの肌は表皮,真皮,皮下組織という複数の層で構成 される複雑な構造を有している.光学的側面に焦点を当て れば,表皮から入射した光は,それぞれの層で反射,減衰, 吸収を繰り返し,その結果として複雑な拡散反射成分と鏡 面反射成分の混合光が肌から出てくるため,肌の反射特性 は肌の見え方に大きく影響する.ここで,反射光のうち 拡散反射成分の割合が高いほど,すなわち入射光に対する 透過光量が多いほど(皮膚内部から多くの光が戻ってくる ほど)肌の透明感が高いことが示唆されている.光は,視 覚的に色や輝度で表現されるため,肌の透明感と色や輝度 の関係が定量化できれば,肌の透明感の知覚メカニズム解 明だけでなく,化粧品等の開発応用にもつながる.そこで 本研究では,肌の透明感における色と輝度の影響を調べる ために,主観評価実験を実施し,結果を解析した.

Effects of Color and Luminance on Perceptual Translucency of Human Skin