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2.1 観測の目的 地殻の活動は力学的作用,構造,変形プロセスによっ てその様式が支配されている.従来,地震学的手法をは じめとしてこれらの要因の研究が進んできた.地震の断 層に着目すると,周囲から働いた力によって定常的にず るずると滑っている場所と固着している場所では断層面 上およびその周辺での力の場が異なる.固着していると ころでは時間がたてばたつほど,力が集中し,最終的に 地震を発生させる.このように断層の状態は周辺の力の 場を知ることによって把握することが可能と考えられる. 活断層などの構造調査は人工的な振動を発生させ,構造 を調査するもので,国内でも多数行われている.これら の探査では,断層浅部と周辺の構造を高分解能で構造を 把握することができる.そして,主に幾何学的形状から その断層の活動度が推定されている.しかし,自然地震 およびそれを発生する地震発生層(数キロメートルから 20 km程度)を詳細に把握することが困難である.一方, 通常の地震観測点網は数キロメートル間隔以上で 100 点 程度の観測網が展開され,地殻内応力場,地震波伝播速 度・減衰構造,地殻ひずみ速度などは 10 km 程度の分 解能で得られてきた.被害を及ぼす内陸の地震は断層の 長さが数十キロメートル程度であり,10 kmの分解能で は“端と真ん中”程度しかわからないことになる.しか し,断層の端では構造がどの程度の波長で変化し,力の 場がどういう影響を受けうるのか?これが活動の様式を 決めるためには重要である.本研究ではこの限界を,超 多点高密度の地震観測で一気に越えて,地殻活動を示す パラメータを kmスケールで明らかにし,地殻活動のま さに「可視化」を目指す.具体的には,1)地震活動の 時空間変化,2)小さな地震の断層の方向分布,3)地震 波伝播速度構造,4)地震波散乱体構造などが挙げられ る(詳細は後述). 2.2 観測概要 この観測は 2000 年鳥取県西部地震(マグニチュード 7.3)の震源域で実施している.この本震に続く余震活 動が現在もなお続いている.余震活動域は鳥取県―島根 県―岡山県にまたがる,直径約 35 km の範囲におよん でいる.この活動域をカバーするように 1000 箇所に地 震計を設置した.観測点密度はおよそ1 km-1である. 観測点には地震計とデータロガーを設置した.地震計は 地面の上下変位速度を検出する地震計(固有周波数2も しくは 4.5 Hz)を用いた.先に述べた活断層調査では 通常 10 Hz 程度のものを用いる.低周波数地震計を用 いるのは,検知深度を深くするためである.Fiɡ.1に観 測点が展開されている位置図と配置を記す.図では既設 の観測点,この地域周辺で発生している地震の震源を記 している2).データロガーはセンサーからの信号を AD 変換し,記録する.サンプリング周波数は 100 Hz であ る.刻時は GPS 衛星からの信号を受信し,内蔵の水晶 時計を校正する機能を有している.また,観測点の位置 情報についても自動で取得し,ファイルへと保存してい る.通常,観測点の位置は設置後測定し,観測点情報 ファイルに記録することが行われているが,本観測シス テムの場合,収録に関する情報は自動で処理され,情報 ファイルを作成することができる.これが 1000 点の多 可視化情報 Vol.38 No.149(2018 年4月)

Thousand Seismic Sites for a Sight of Crustal Activity