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人工心臓および体外循環ポンプなどの血液にかかわる 医療機器の開発において,流体力学的な観点から検討で きる,臨床上最も重要性の高いものは,まぎれもなく抗 血栓性(血液抗凝固特性)であろう.なぜなら,形成さ れた血栓が体内に流れてしまうと塞栓症を引き起こし, 致命的となるからである.そのため,血栓形成の回避は 必須であり,その確認のために,人工心臓の開発におい て動物実験が実施されていると言っても過言ではない. 血栓形成のメカニズムは複雑であり,未だ不明な部分が 多いが,一般的には,血液中の血液凝固因子が高せん断 および異物などにより活性化され,低せん断域すなわち 流れの淀み域において凝固を進め,血栓が形成されると 言われる(Fiɡ.1)1).活性化の定量については未だ不確 定である一方,流れの淀み域の定量は,まさに流体力学 が担当すべきものである.したがって,流れの可視化に よる実験解析および数値流体力学解析などの流体力学手 法によって,人工心臓内の流れの淀み域を定量評価する ことにより,人工心臓における血栓形成のリスクを予測 することができる.そして,この評価が人工心臓の開発 における重要な役割を占めている. 同様に,人工心臓の開発において,溶血(赤血球破 壊)特性も重要であり,そのためには過度な高せん断を 回避し,米国試験材料協会(ASTM)の規格になって いる溶血試験によって低溶血性を示す必要がある.すな わち,人工心臓の開発においては,流れの淀みと過度の 高せん断という,相反するリスクを避ける設計が基本と なる. 本稿では,血栓形成のリスクに着目した,人工心臓お よび体外循環ポンプの開発における流れの可視化の役割 について解説する.

Flow Visualization of the Risk of Thrombus Formation in Artificial Heart / Extracorporeal Circulation Pump