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燃料電池とは燃料(水素)を還元剤(酸素)と電気化 学的に反応させることにより,反応に伴うエネルギー変 化を直接電気エネルギーに変換する発電システムである. クリーンで高効率であることから次世代のエネルギー源 として研究・開発が進められている.燃料電池の更なる 実用化には,発電性能と耐久性の向上が不可欠である. 燃料電池にはいくつかの種類があるが,その中で,小 型化・軽量化・低温動作が可能で実用化が最も進んでい る「固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell, PEFC)」の構造を Fig.1 (a)に示す.通常の PEFCにおいてはいくつかの電池を直列に配列させて使 用するが,この図では「単セル」と呼ばれるひとつの電 池だけで構成されるものを示す.中央の「MEA」とし て示された「膜電極接合体(Membrane-Electrode Assembly, MEA)」が PEFC の発電を担う反応場であ る.このMEAは,導電性のカーボンや金属で作製され たガス流路ではさまれている.ガス流路とは文字通り水 素と空気を供給するための流路であるが,発電により生 じた電流を集める役目もかねている.その外側を,エン ドプレートと呼ばれる金属等の板で挟みこみ,単セルを 構成する.Fig.1(b)に,MEA の模式図を示す.厚さ 30μm程度の高分子電解質膜上にアノードおよびカソー ド触媒層が形成され,アノードおよびカソードそれぞれ の触媒層の外側に,集電材として多孔質カーボンペー パーでできたガス拡散層(Gas Diffusion Layer, GDL) が付されている.Fig.1に示すように,PEFC は閉じた 構造をしている.PEFC 内部において,発電中,何の反 応が,どこで,どのように,なぜ進行しているかは未解 明なままであり,これが発電性能と耐久性向上のボトル ネックとなっている. PEFC においては水素と酸素が反応し,発電が起こる とともに水が生じる.PEFC 内の水が多すぎる場合は燃 料や酸素の触媒層への拡散を阻害する1,2)が,少なすぎ る場合はプロトン伝導性を低下させるばかりではなく劣 化の原因にもなる1,3,4).そこで,液体水の可視化が中性 子ラジオグラフィー5-8)や NMR9,10),X 線マイクロトモ グラフィー11,12),CCD カメラによる撮影13-17)などによ り広く研究されてきた.しかしながら,PEFC 研究の中 心的な課題である酸素の効率的な利用や触媒劣化時に発 生する二酸化炭素の発生等を可視化して定量する研究は 存在しなかった. 可視化情報 Vol.31 No.123(2011 年 10 月)

Simultaneous Visualization of Water Droplets and Oxygen Partial Pressure in Gas-Flow Channels in a Running PEFC