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鉄筋コンクリート構造物の劣化要因のひとつにコンクリート中に おける塩化物イオンの存在があり、塩化物イオンによって引き起こ される塩害は耐久性に関する設計や診断において、中性化などその 他の劣化要因よりも支配的となり得る。 建築における塩害は大きく 2 つに分けられ、コンクリートに使用 された材料にあらかじめ多くの塩分を含んでいる場合の内在型と、 海岸地域のような海に近い環境下において海からの塩分がコンクリ ートに供給される外来型がある。 このうち、内在型の塩害については 1986 年に導入された塩化物イ オンの総量規制により、それ以降の建築物にはほとんど見られなく なった。そのため、現在懸念される塩害のほとんどは外来型であり、 建築という特性から海水に接するものよりも、陸地において海から の風により運ばれる飛来塩分からの塩分供給が主要因となる。 コンクリート中での塩化物イオンの浸透・拡散性状による移動に ついては、実構造物の調査結果 1)、供試体の暴露試験 2)~4)および 各種促進試験 5)~7)等多くの報告がなされている。 これらの報告より、飛来塩分による塩化物イオンの浸透メカニズ ムは、コンクリート表面に付着した塩化物イオンが雨や潮風の湿分 に溶け込み、コンクリート内に侵入して深部まで拡散するものとさ れている。また、このときのコンクリート中への塩化物イオンの浸 透には、塩水の吸水に伴う移動と内部での濃度差による拡散がある と考えられている。特に水分の移動がある範囲では、塩化物イオン の移動は水分の影響が支配的となることから、丸屋ら 8)、9)や山田ら 4)は水分の侵入に伴う塩化物イオンの移動について拡散方程式に置 き換えて解析している。一方、乾燥時には液体としての水分の移動 がないことから、塩化物イオンのコンクリート外への移動は直接水 に接しない範囲では流出がないとの報告 10)もある。 このように、塩化物イオンはコンクリートの乾湿繰返し環境によ りコンクリート内に蓄積されるものと考えられ、その量はコンクリ ートの吸水や乾燥の性状と密接な関係があると考えられる。しかし、 塩化物イオンのコンクリートへの侵入量と蓄積量や、内部への浸 透・拡散性状については不明な点が多い。 そこで、本論文ではコンクリート中への塩化物イオンの浸透・拡 散性状について、乾湿繰返しの浸透促進試験を実施し、コンクリー トの質量変化と塩化物イオン含有量の関係について検討を行った。 なお、本論文は筆者らが乾湿促進試験方法と塩化物イオン量の関係 について行った実験結果の速報 11)に新たな知見と考察を加え再構 成したものである。

PENETRATION AND DIFFUSION OF CHLORIDE ION AND WATER ABSORPTION PROPERTIES OF CONCRETE BY ALTERNATING IMMERSION