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1. 序 1. 1. 研究の背景と目的、意義 歴史家 A. フォーティーが著書『言葉と建築』注 1)において、「記 念のために建物を作ることは、建築の最も古くからある目的の一つ である。ある人々や出来事を直接見て知っている個人的な回想をこ えて、社会的に共有されたこれらの記憶を保ち続けることができる、 と建築は期待された。」と述べているように、著名な人物や歴史的事 実を記念し、後世に伝えるという記念性は、建築に古来から備わっ ている重要な社会的役割のひとつであると言える。現代においても、 建築はそうした役割を担っていると考えられ、なかでも記念館建築 注 2)は、これを基本的な目的として建てられるものである。したがっ てその設計論注 3)からは、建築の重要な社会的役割である記念性に関 する思考を明快に読み取ることが可能であると考えられる。 以上のことから本研究では、現代日本の建築家注 4)による記念館建 築の設計論を資料として注 5)、記念性に関する思考の枠組みの一端を 明らかにし、設計に際して建築の社会的役割を思考する上での新た な視座を得ることを目的としている。また上記の観点に加えて、記 念性に関する思考は、時間の経過のなかで建築をどのように認識す るか ( 以下、時間認識 ) に関わる点でも重要な意義をもつと考えられ る。筆者らは、これまで、増改築建築と連作注 6)を題材として、時間

現代日本の建築家による記念館建築の設計論にみられる記念性に関する思考