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1-1 背景と目的 我が国の大都市圏では、諸機能の都心部への過度な集中及びそれ に伴って生じる大都市問題の緩和のために、産業の郊外化を基軸と して都市圏構造の再構築が試みられているが、産業の郊外化は近 年鈍化しており、郊外核都市では戦略の見直しが急務となってい る。 一方我が国をふくむ先進諸国では、脱工業化に伴う経済の「知識 化」が進展しており、「知識産業」が都市発展の新たなドライビン グフォースとして台頭しつつある。知識産業は財の移動が極めて 容易かつ安価に可能なこと等から、用地・用水・流通機能等への接 近が重要な工業や、消費市場への接近が重要な商業などと異なる、 特殊な立地原理を有していると考えられる。従って、産業のさらな る「知識化」の進展に伴って、大都市圏における産業分布原理も目 下大きく変化しつつあることが想定される。しかし、我が国では知 識産業の立地メカニズムに関する研究蓄積が少なく、産業分布から みた大都市圏構造が「知識化」によって受ける影響についての知見 は殆ど得られていない。 当該分野の研究蓄積が比較的豊富な欧米の実証研究によると、知 識系企業は大都市中心部に集中する傾向が見られる。実際、東京 大都市圏の知識産業立地を分析した筆者らの研究でも同様に、都 心集中の傾向が確認されている。一方筆者らは同研究において、知 識産業の立地決定に関して「都心との物理的なアクセス性」よりも 「地域の都市的な環境(アーバニティ)」が及ぼす影響が大きいこ とを明らかにし、近年の郊外における都市化の進展とあわせて、郊 外立地の素地が整いつつあることを指摘した。さらに、逗子・鎌倉 地域において東京からの転入企業を中心とした知識系企業の集積が 生じていることも報告されており、これを知識産業の郊外立地の 兆候と見ることもできる。 このように、東京大都市圏の知識産業分布は、現時点における実 態としての「都心集中」と、兆候としての「郊外立地(あるいは少 なくともその素地の醸成)」という二面性を抱えていると考えられ る。しかし、東京大都市圏の知識産業分布が現時点でさらに都心集 中化しつつあるのか、あるいは逆に郊外化しつつあるのかに関して は、今のところ明らかになっていない。 長期間にわたって進行する立地変化の兆候をいち早く把握するに は、移転流動を捕捉することで変化傾向をとらえ、そのメカニズム を分析する「動態分析アプローチ」が有効である。そこで本研究で は、東京大都市圏を対象地として知識産業に分類される企業(知識 系企業)の移転流動を動態的に分析し、以下の3点を明らかにする: 1知識産業従業者の分布実態とその変化 2知識系企業の広域的な移転流動の発生実態 3知識系企業の広域的な移転流動の発生メカニズム 以上をふまえた上で、戦略の転換期を迎えている郊外都市が、大 東京大都市圏における知識産業事業所の広域的移転流動パターンと その発生メカニズムに関する研究

REGIONAL REDISTRIBUTION PATTERNS OF KNOWLEDGE INTENSIVE BUSINESS SERVICES AND THEIR GENERATING MECHANISM WITHIN THE TOKYO METROPOLITAN AREA